ニット原料を知ると製品作りが楽しくなる(シルク編パート3)
- ニット糸の取り扱い方法
- 投稿日:
- 2015-09-02
- (更新日:2020-06-27)
猛暑が続いた夏でしたがやっと朝晩が涼しくなり過ごしやすくなってきました。
皆様は体調を崩さずお過ごしでしょうか。私は、風を拗らせ肺炎になってしまい、一週間ほど入院をすることになってしまいました。入社をして30数年で初めての事です。
ここ数年風邪もかからず、元気だけがとりえだったのですが、周りからはもう年なのだからと言われ、少しショックです。今後は老体に鞭を打ち頑張ります。
休みの間はご不便をお掛けし申し訳ございませんでした。この場をお借りし、お詫びとお礼を申し上げさせて頂きます。また、心配をして頂きありがとうございました。
こんにちは、丸安毛糸の田崎です。完治しましたので頑張ります。
今回はシルク糸の作り方、種類、長所、短所に付いて書いていきます。
シルク糸の作り方
シルクは他の繊維原料と違い、他の原料は繊維長が短いので紡いで(紡績)糸にしますが、繊維長の長いシルクは、繊維を引き揃えて糸にする製糸、繊維をカットして紡績をしたり、繊維を薄い膜にしてつむぐなど、繊維を活かした方法で糸にします。糸にする方法は大きく分けて3つあります。
1、製糸
繭から繊維を引出し、一本の糸にする方法を製糸と言い、出来上がった糸を生糸と言います。この糸は長い繊維を引き揃えたものなので、糸の表面が滑らかなのが特徴です。
糸の太さは引き揃える本数でコントロールします。1本の繊維は約3デニールなので1/10の糸を作るには300本を引き揃えて作ります。
2、紡績
紡績糸は製糸の出来ない繭や、繭の表面の毛羽などを短くカットしたものを紡績にかけます。紡績をすることにより膨らみのある糸になります。
3、手つむぎ
繭の表面を引きはがして薄いシルクの膜(真綿)を作り、その真綿から繊維を引き出しながら撚りをかけて糸にしていきます。手で紡いだ糸は、表面に凹凸があり、表情のある糸
が出来上がります。
シルク糸の種類
1、製糸で作られた糸(生糸)
生糸に使われる繭は家蚕、天蚕、柞蚕で、繭の種類によって特徴のある生糸になり、それぞれ家蚕糸、天蚕糸、柞蚕糸に分類されます。
生糸
2、紡績で作られた糸(絹紡糸)
生糸に出来ない繭の繊維をカットした物の中でも上質な繊維を紡績して糸にします。スパンシルクとも呼び、生糸と比べ膨らみがあるのが特徴です。
もう一つ絹紡紬糸があり、絹紡糸とほぼ同じですが、使われる絹綿の品質が悪くなるため、太く粗い糸になります。
絹紡糸(スパンシルク)
3、紬糸
真綿から手で紡いだ強い糸です。代表される物に結城紬があります。
紬糸
シルクの長所と短所
シルクは、蚕が作り出す自然の天然繊維素材です。その性能には長所と短所があります。
シルクの長所
1、光沢 シルクの繊維構造と、繊維の三角な断面がもたらすきれいな光沢があります。
2、発色性 繊維長が長いので毛羽立ちが少なく、内部からの反射により鮮明度の良い発色になります。
3、風合い 繊維が細く、長いので柔らかな風合いになり、繊維のうねりや弾力性などがコシのある風合いになります。
4、ドレープ きれいなドレープが出るのは、繊維の細さや弾力性のバランスが良いからです。
5、軽くて暖かい 繊維の中に多くの空気を含むので保温性が良く、空気を含むのとシルクの比重も軽いので、軽さが増します。
6、吸収性と発散性 綿と比較をすると、1.5倍近い吸収性があり、発散性も優れているので着心地も良くなります。
7、その他 静電気も起こりにくい、引っ張りに強い、燃えにくいなど良い点が多くあります。
シルクの短所
1、毛羽立ち 摩擦で毛羽立ちやすいので、編立時や着用での注意が必要です。
2、横変 シルクは紫外線の吸収が良いので、少しずつ横変をして行き強度も低下していきます。吸収が良いので紫外線防止にはなります。
3、しわになりやすい しわになりやすいので着用時に注意が必要です。
4、虫食い シルクのタンパク質を虫が好むので、保管に注意をしてください。
5、堅牢度が悪い シルクは染色性が悪く、黒は他の素材に比べ淡く、濃色は色落ちに注意が必要です。白は元々のシルク原料に色があり、白度が上がりません。
まとめ
シルクは硬いタンパク質に覆われていて、取り除くにはアクリル水溶液(その前は膠)で煮詰めて取り除きます。その作業を練り上げと言います。そこから考えを煮詰めることを
練ると表現するようになったそうです。
シルクの長所や短所を理解をして頂き、シルク製品の企画を練り上げて頂ければ幸いです。
シルク原料に付いて、3回に渡りお付き合いを頂きありがとうございました。
また、次回もよろしくお願いいたします。