【教えて!ターさん】糸1本ごとの巻き量の違いについて

  • 教えてターさん!

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糸1本に対して1㎏の時もあれば0.8㎏など、なぜバラつきがあるのだろう?と疑問に感じたことはありませんか?

今回の「教えて!ターさん」では、原料ごとの巻きの違いと染色調整について、詳しくお話しました。

※個人的な見解が含まれる場合がございます。あらかじめご了承ください。

佐野
佐野

田崎さん、今日もよろしくお願いします。
今日はまず、原料ごとの巻きの話です。

佐野
佐野

これもよく質問される話だと思うんですけど、例えばウール1本の巻きが1㎏だとしたら、綿の糸を買う時0.94㎏になっているとか。あと調整糸を買わせてもらう時に、0.75㎏とか0.8㎏とか、1.05㎏、1.15㎏とか。
このばらつきって、原料ごとにどういう取り替えや背景があるとか、理解を深めたいなという回です。

ウールの場合は国内で紡織しているものはだいたいすべての生地糸段階で1㎏巻きになっているので、当然染め上がりも1㎏という形になるんだけれども、綿の場合は㎏じゃなくて今だにポンドなんだよね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

それって綿紡織さんがそういう考え方しているんですか。

そう。もう海外も含めてポンドなんだよ。普通コーンにするのはだいたい2ポンド。2ポンドをコーンにするんで、そうすると945gになる。

ターさん
ターさん

ウールの場合、1ケース24本入り24キロ。ところが、綿の場合は、1ケース24本入りで22.68㎏。あくまでポンド計算。いまだにそれがあるんだよね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

なるほど。

そのまま1ポンド、2ポンドの巻きの状態で輸入されたものはその状態になっているので、そのまま染色。国内でやっているものとか、国内でそれをコードにしたり連シルしたりしているものに関しては、1㎏になっているものもあるけれども、元は大体1ポンド。

ターさん
ターさん

合繊の場合はいろいろあって、例えば普通のポリエステルの場合は染色において1㎏以上あっても1.2㎏とかなんていうのは染めることは可能なんだけども。

ターさん
ターさん

ストレッチ糸の場合は、あまりにも大きい巻きだと染色性が良くないんだよ。
じゃあこれだったら0.75㎏がいいかな、これは0.8㎏がいいかなっていう形で染色しやすい数量で巻き上げて染工場さんが染めている。だから1本0.8㎏とか0.75㎏とかそういう単位のものが出てくるんだよね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

そっか、こないだお伺いしたお話でも合繊系って、そもそも巻きの話をしちゃうと、3kgとか4kgとか結構でっかいですよね。

そう。だから0.8kgに分けるのも、それこそ1本が1.5kgだとか、2kgだとかって玉があるんだけれども、全部が1.6kgでそれを半分にすればいいやつじゃなくて。
1.5kgだったらば、1本0.8kgにして、残り700gに100g足して0.8kgにするとか、そういうふうに染工場さんは下巻きをしているんだよね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

合繊系に関しては、もともとの生地糸がどうっていうより、染色都合みたいな。

そう、染色しやすい。確実にムラが出ないような数量で染色する方が良いからね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

じゃあ、綿に関しては?
綿に関しては、紡績の段階の話というか。

そう。綿糸の場合は、基本的に1本0.945㎏になっているね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

なるほど、綿にちょっとお話戻しちゃうと、綿のそのワタの取引単位からポンドなんですかね。

そう、世界共通ポンドなんです。で、日本はまた変な単位があって、梱(こうり)という単位があるんだ。1梱って、さっき言った24本入りで1ケース22.68kgのケース8個が1梱(181.44Kg)になるんだよね。

ターさん
ターさん

1ケース取ると、仕入れ伝票に「8分の1梱」って書いてあるんだよ。パッて分かんないよね。だからその時に初めて、181.44㎏÷8=22.68kgになるんだね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

綿をメインに扱っているお仕事の人たちからしたら当たり前に使っている?

うん。だから商社からの請求書でもたまに「0.125梱」なんていう請求書もあるんだよ。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

×いくらみたいな?へー。

佐野
佐野

梱って単位があって、ポンドで換算してっていうところまではまず分かりました。
で、ただそれを僕たち㎏で換算して扱うじゃないですか。これって、これも割と世界共通に近いんですかね。綿の糸使っても。

綿の糸の場合は、まあ㎏に直す。
余談だけども、今は違ってきちゃったけど、やっぱりヨーロッパの方ってバターだとかマーガリンだとかって、昔は1ポンド(450g)だったよね。

ターさん
ターさん

今はね、ちょっと物価高で、大きいマーガリンも350gしかないので、単価を一緒にして数量を減らしちゃったけども、僕は若い頃は完璧にそういう単位だった。
だからそれが、今の綿はそのまんま、まだ残ってるよね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

えー、なるほど。僕らで言うと身近な綿、植物としての綿ですけど、そういう食品加工とか、いろんな業種によってはまだポンドですね。

さっき言ったように食料品の方が物価が上がってきて、値段を上げるということがあって、量を減らすという思考も取っちゃったりしたから、そういうふうに崩れていったりしたけど。

ターさん
ターさん

ただこの間ね、ポリエステルの糸を買ったんだけども、いまだに一玉っていう単位で。一玉っていうのもこれもね、綿の単位なんだ。

ターさん
ターさん

昔、この近所にも綿屋さんがあって、販売するのに捨て糸を買いに行ってたりなんかしたんだけども、そうするとそこの単位は一玉。その時の一玉って4.5kg。
そういうのがまだあって、久しぶりに玉って聞いたよ。だからそれも綿と同じなんだよ。

ターさん
ターさん

それこそね、カセで真ん中通して縛ってあったんだけど、買いに行くと、それが1つの単位。カセの糸って、真ん中に1カセをパッて通して、まとめてあるじゃない。ああいう形で販売していたんだ。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

あ、なるほど。いろんな単位って、昔の国語辞典とか全部一緒に載ってましたよね。ああいうのを見るとまたそういうの出てくる。

最近なくなったけど、昔一度だけオンスっていう単位が出てきたからね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

でもオンスは確かに生地だとまだ使ってますね。デニムとかでも。

佐野
佐野

Tシャツがビッグシルエットで厚手になってみたいになると、結構オンスで表記してますね。今逆に馴染みのある人たちが増えてきてますね。

そうなのかな。普通に糸だけやってるとあんまりオンスって聞かないんだ。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

取り扱っているものを、何をメインにしているか。業界の業務内容の差ですよね。
値段とかでいうと、ポリエステル関係も㎏単価なのか、1本あたりの単価なのかで、ちょっと表記も違ったりしますもんね。

カセの場合もちょっとばらつきがあったりすると、太い膨らみのある場合は1㎏巻けないんだよね、大きくなりすぎちゃうと。だからそうすると、じゃあ2カセ500gでコーンアップしようかとか。じゃないとガイドにぶつかって擦っちゃって、糸切れを起こしたり汚れを起こしたりするので、そういうことは結構あるね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

そうだ、ガイドにぶつかるってあるんですよね。

カセ染色はだいたい、重さだけでいうと、200g~250gぐらいのカセを使うことが多いよね。
スプーニャは、わざと1カセ400gにして、2カセで800g=1本で仕上げているよね。国内の巻き機だと、400gのカセを巻くには幅が広すぎて、カセの厚みがありすぎてトンボにかからないんだよ。

ターさん
ターさん

イタリア製の「ファデス」という機械があるんだけど、それは幅が広がるので、400gとか、極端なことを言ったら1㎏のカセがかけられて巻くことができる。どういうコンディションでやるのがベストかなと考えて、スプーニャは400g2カセ1本という形。あれもやっぱり膨らみのある糸なので、1㎏巻くとちょっと危険かな。だったら800gぐらいで止めておいた方がいいよね。400gにすると、それこそ1回だけ繋げばいいので生産効率も上がりますよね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

幅広で巻けるとはいえ、500gにせずに、あえて400gにして。

うん。糸のコンディションを考えてね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

そういう話はやっぱり面白いですね。細い糸だったら、500g、1000gでもいいんだけど、膨らみのある糸は無理して1000gで巻かないでいいですね。

佐野
佐野

確かに、日本のワインダーの機械とイタリア製の機械のそもそも考え方の違いだけですよね。

うん。イタリアの場合、いまだにカセ染めの方が多い。前にもちょっと話したけど、ウールの染色には絶対、カセ染めの方が風合いが良いよね。やはり巻きするのって250gを1㎏にするってことは、3回繋がらなきゃいけない、そうすると手間なんだよ。
であればできるだけ大きいカセ糸を作って、それが巻ける機械にしたほうが手間が省ける。そういう発想でイタリアのファデスっていう巻き機は1キロのものを巻けるっていうことなんだね。

ターさん
ターさん

たださっき言ったように太い糸は1㎏は難しいから、その辺は800gにするとか700gにするとかにしているよね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

イタリア製の梳毛を購入しても、やっぱり0.78㎏とか0.82㎏とか、あれって要はカセ染色一発なんですよね。もう何なら結び目なしっていうことですね。

効率がいいと。ただ、その巻き機を持ってないと、それがかけられない。うちにも巻き機あるから、だいたいあれが12錐とか、くっついて一つの機械になってたりとか、24錐ついてたりとかってなってたりとか。幅が狭いんだよね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

繰り返しになっちゃいますけど、今話していただいているのはカセ染色の話ですよね。1本1㎏っていう考え方がなんとなくチーズに基づいたルールの話で、そこはベースにしてるけど、原料によって出来上がってくる。僕らが最後販売する1本の巻きはどういう構成で出来てるかっていうのは、全然その背景が違うと思いますよね。

まあね、で色々コンディションを考えながら、それに似合った巻き機を作るっていうのを聞いたり。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

ってことは、お客さんからしても僕らからしても、この糸は1本何g巻きだよ、みたいなコミュニケーションがあっても良さそうですよね、いい意味で。やっぱ何でもかんでも1本1㎏だと思って買ったら、違ったみたいなことはやっぱ出てきちゃいますもんね。

取引先さんによっては、1本何グラムって書いてあるよ。
特にラメの世界はそれが多いから。いろんな巻き量があるんで、必ずこの糸は1本何gって書いてあるでしょ。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

そうですよね。あれもコンディションの話なんですかね。本数にしてズレてきちゃうとか。フィルムカットしたとか。

まあ、よくわかんないけど、何かしらあって、そういうふうな素材ごとの巻き量が違うんじゃないかな、基本的にはだいたい500gが多いですね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

確かにそうですね。なるほど。また今日も勉強になりました。巻きの話はここまで。ありがとうございました。

まとめ

◎糸1本当たりの㎏数が違うのは、大きくは原料により業界の通例の“単位”が異なるため

◎ウールは㎏、綿はポンド(約450g)、綿は㎏に直すため2コーンで1本約0.945㎏(2ポンド)となる

◎ポンドに関連し、日本では梱(こうり)という単位がある。1ケース(24本入り)22.68kgのケース8個が1梱(181.44㎏)

◎カセ染色後のコーンアップでも、糸の太さや巻き機械の大きさにより最適な数量が変わるため、仕上がりの数量に影響する

結びに

いかがでしたでしょうか?

日本での普段の生活では馴染みの薄い単位が背景に関係していることがお分かりいただけたのではないでしょうか。

次回の「教えて!ターさん」もお楽しみに!!