【教えてターさん!】染色プロセスの問題と対策

  • 教えてターさん!

9

大好評企画「教えてターさん!」。

今回は染色の際にどうしても避けられない問題である「染めムラ」について。

チーズ染め、カセ染め、それぞれ起きやすい問題と原因、そして対策に関して詳しく聞いていきたいと思います!

※個人的な見解が含まれる場合がございます。あらかじめご了承ください。

佐野
佐野

今回は、「染めムラ」について教えてください。
チーズ染めで起きるムラと、カセ染めで起きるムラ、それぞれどういうことが考えられるかをまずはお伺いできたら。

まず、チーズのムラで一番よくあるのは内外色差
チーズの染色って、じわーっと内から外に染料が行くようになっていて、どうしても内側の方が圧が強くて、濃くなりがちなんだよね。

ターさん
ターさん

例えば50本染めたときに、ちょっと怪しいなっていうところを何本か抜いて、そこの糸を繋いで検査する。50本全部やるわけじゃないから、中にはどうしてもイレギュラーなものが出てきてしまって。よく編み繋いだ時に少し濃さが違うっていうことが起きちゃうね。

ターさん
ターさん

チーズの場合の原因は、これは一番難しいけれども、下巻きの硬度。
硬度っていうのは、下巻きの硬さがあるんだけども、柔らかすぎても、硬すぎても良くない。硬すぎちゃうと染み込んでいかないから良くないし、逆に緩すぎると水(染料)が通る場所ができちゃうんだよね。そうするとその周りだけが濃くなってしまう。巻きの硬度が大事なので、染工場さんがいろいろ考えてくれるんだよね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

斑ムラはどうですか?

斑ムラはどうだろうな、あまり最近見ないし、それでトラブルになったっていうのも聞いていない。最近はチーズの場合は、ほぼほぼ内外色差が多いかな。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

下巻きの硬度によって起きるムラが、もし出てきちゃったとしたら、そっちの方が多発する可能性はあるかもしれないですよね。全部の下巻き機のテンション管理をすべてやってしまうということですもんね。

チーズのコーンの大きさだったりも考慮して、浸透性を考えてやってくれているよ。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

なるほど。今のお話はちょっと僕もハッとするところだったんですけど、チーズの内外色差はニットをやってると理解しやすいというか、なじみは多少あって。
それが起きても、みんな冷静に対処できている内容かなと思うんですけど、いろいろ聞きたいのはカセの方ですね。

佐野
佐野

カセの染色ムラって、たまにしか起きないじゃないですか。起きてる時って何が原因なんでしょうか。

一番大きな原因は、カセの噴射器。アームが出てくるよね。アームの根元から先端まで、例えば100kg釜であれば10頭といって、1本に10kg掛かるアームが10本あるんだよね。
それで100kgになるんだけど、それが全て均等に圧が掛からないとムラができちゃう。
根元の方は当然圧が強いんだよね。先の方へ行くとどうしても圧が弱くなる。そうするとそこの水回りが悪いので色が薄かったり、ムラになったりするね。

ターさん
ターさん

カセの場合はチーズと違って段ムラってあんまりない。パキッと割れるわけじゃなくて、虎ムラっぽく出るよね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

じわっと線がたくさん入るみたいな。

水圧にばらつきがあったりすると、そういうことが起こりやすい。
何かで100Kg釜のアーム1本の先端の方だけが詰まっちゃって水回りが悪いと、100Kg全部がムラじゃなくて何本かだけ出るのはそういうケースが多いね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

そうですよね。何本かって感じですもんね。
カセで染めてる素材で、お客さんから「よくわからないムラがあるんですけど」って言われたときに検証すると、確かにおっしゃる通り100Kg出していても、該当するのが3、4Kgぐらいの枚数の報告が来るので、それってそういうことなんですね。

佐野
佐野

ちょっと内外色差とも似ていますね。染色の水と染料のかかり具合ですね。

チーズにしたって圧をかけて内側から外側に染み込ませていく。
カセの場合だって、同じようにアームを使って根元にかかっている糸と先端にかかっている糸、それを均一にしなきゃいけないという部分では同じですね。

ターさん
ターさん

あと染色でどうしても避けられないのがロット間の色差

ターさん
ターさん

これはもうチーズでもカセでもそうなんだけども、どうしても色ブレが多少起きる。この問題も人が染料を測るからそうなるんじゃないか。大きい量を染色する場合には、袋ごと全部入れちゃって、全部袋も溶けると、染料は均一だよね。

ターさん
ターさん

それでやっても、黒を染めて編みつなぐとやっぱりブレが起きる。これは何かっていうと、気温と湿度管理まで人の力じゃできないから。染料を測ってなんとかっていうのは人がやってるから、ある程度管理ができるかもわからないけども、自然の湿度や気温だとかは、人が管理できないじゃないですか。ただこの影響も多少あるんだよね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

そうですね。夏に染めるのと、冬に染めるとでも違いますよね。

うん、違うんですよ。だからどうしてもね、ブレは出てしまう。
それがどれだけ大きいか。許容の範囲かどうかだね。人の目でパッと見た時には一緒でも、編み繋いだら必ず色が違ってしまうね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

近年うちの会社で取り組んでいることで、なるほどなと思ったのが、「バスロット充填率」
染糸が何Kgに対して、この素材は何%ぐらいの重さで入れたらいいとか、バスロットを決めちゃう。24Kg染める次は、25Kg、26Kgじゃなくて、32Kgの染色をするとか。あれもやっぱり、ロット差がなるべく起きにくいように、数量を決めているということですね。

なるべく同じ数量で染めてもらった方が、色ブレが少なくなるよね。例えば100kg釜で80kg染めるのか、100kg染めるのだったら100kgの方がぴったり釜に合っているわけです。染料を80kg染めるんだったらどのくらい減らすか、計算しなくてはいけないけれど、100Kgであれば1対1の割合でいいよね。

ターさん
ターさん

ちょこちょこ染めるんじゃなくて、常に100kg釜に対して100kgの方が、色が安定するよね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

それはやっぱり理にかなったアイデアなんだなとは思います。

100kgの釜に対して膨らむ糸は100kg入らない場合、糸によって「これはマックス75%ですよ。これは90%まで入りますよ」という風に染色工場さんとの対話でこの糸は何キロまで、何%ぐらいまで入りますかと確認して充填率を出して染色依頼をする事でこれも安定した染色が出来るよね。

ターさん
ターさん

そうすると染工場さんも充填率が高ければ高いほどロスが無くなるよね。
100Kg釜に対して80Kgと言うと20%のロスが出るけど、100Kg釜に対して100Kgと言うとロスがないから、両方にとってメリットがあり、色ブレが少なくなるね。染工場さんも充填率100%でその方が利益率も良いわけだよね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

そうですね。染めのロットの問題は、自分に置き換えてすごく納得できたのが、料理なんですけど。

佐野
佐野

要はこの分量で作ろうと思って、今日はちょっと多く作りたいから、分量倍にしようと思って、全部水も醤油もみりんも全部倍の量にしても、同じ味にならないですよね。なんなら色も違うし、なんか結構そういうのに近いですよね。

それはやっぱり比率があるから。単純に倍じゃなくて、倍までいったらすごい濃いものになっちゃうと思うよ。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

しかも使っている鍋は一緒だから、そういう条件もできていたし、内容比率も倍にはなってないですしね。これも染色のロット差ってこういうことだな、同じものって生まれないんだなっていう。野菜とかだとそこから水が出てくるけど、肉はそうじゃないとかね。入れるものにもよりますね。

佐野
佐野

染色ムラの濃厚さの原理は今のですごく分かるんですけど、僕らが関心あるのは、“二浴染め”。要は、濃色に染めたいウールポリエステルの時のウールとポリエステルの色差。これの統一って普通にやっていますけど、すごい技術ですよね。

そう。例えば、ウールポリエステルの素材で赤の色見本を出した。一見でその色見本に合ってる。でも、厳密にウールとポリエステルの撚糸ものであれば、それを分けた時にウールとポリエステルの色が合ってるかっていうと、結構違ってたりするんですよね。一見では合ってるけども。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

一見で合うっていうところなんですね。
トラブルになるときって一見で割れてるじゃないですか。これは年に何回か起きますよね。

簡単に言ったら、麻レーヨン、綿レーヨン、これの綿糸ってセルロース系。そうすると綿レーヨンの場合はレーヨンの方に染料が多く取られちゃう。で綿の方が薄くなっちゃう。どうしても割れちゃうっていうのがあるね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

そうですよね。綿レーヨンは特に色割れが多いですね。赤系、水色系、ネイビーだとか。田崎さんがおっしゃる通り、染料が同じだから、やりようがないですよね。

うん。ただ、薄い色は合いやすいよね。染料が少ないからね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

そうですね。あれはなかなか難しい問題ですもんね。

そこにシルクとか入ってきちゃうから。だから三つの素材で“三浴染め”なんかっていうと、全部色合わせるなんてとても難しい。だから一見色になるんだよね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

結果論ですけど、逆手にとった糸作りもあるんじゃないですか。綿、アクリルで 二色玉の糸で染め分け前提みたいな素材とか。ああいうのはやっぱ面白いですよね。

アクリルと綿だったら,色を変えることが可能じゃない。そういう楽しみもあるね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

なるほど。ありがとうございます。
じゃあ、まとめとして、染めムラのチーズとカセの違いは?

チーズはほとんどが内外色差、カセ染めは虎ムラ。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

ありがとうございます。仕入れ先の染工場さんとか紡績工場さんと、ターさんの対話を録音しても面白そうです。「教えて!ターさん出張編」、いいコンテンツになりそうですね。いったん今日はここまで!

まとめ

◎染めムラは、チーズ染めはほとんどが内外色差、カセ染めは虎ムラ

◎チーズ染色はコーンの内から外に染料が噴射されるため、内外色差が起こりやすい

◎カセ染色は噴射器のアームに糸を掛けて染めるため、アーム箇所により染料の圧が異なり、虎ムラ(筋状のムラ)が生まれやすい

◎ロット間の色ブレを避けるため「バスロット充填率(=釜に対して糸を何Kg入れるか)」を加味して染色をする事で最小に抑える。

結びに

いかがでしたでしょうか?

「染ムラ」と一言でいっても、染料と圧力、比率の関係、気温や湿度など様々な要素が複雑に関係しているのですね。

ぜひ、次回もお楽しみに!!