【教えて​​ターさん!​​】獣毛原料の​マイクロンに​ついて

  • 教えてターさん!

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先週末の土日、12/14,12/15は毎年恒例の「まるやす冬市」でした。二日間を通して、過去一番のご来客数となりました。寒さが厳しい中、沢山のお客様にお越しいただきました。ありがとうございました!

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さて!教えてターさん!今回は糸のタッチを大きく左右するマイクロンについて。

柔らかい糸を作るには、ただいい原料を使うだけではダメ!?

羊の生育と毛質の関係などを教えてもらいました。

※個人的な見解が含まれる場合がございます。あらかじめご了承ください。

佐野
佐野

今日はマイクロンについて教えてください。はい。まずマイクロンってそもそもみたいなところなんですけど、なんですか?

マイクロンって数字の単位になっていて、よく表せるのが毛の太さをマイクロンで表示する。その中で普通のメリノウールだったり、それによって太さも変わってくる。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

マイクロンって、なんていうんですかね、勘違いしやすいですよね?

簡単に考えればいいんじゃないかな。数字が少なければそんだけ細い。数字が大きくなると大きくなるほど、糸質が太い。単純に考えてもらえればいいと思う。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

そうですね。なんで混乱するかというと、糸の番手のせいなんですよ。糸の番手と結びつけちゃってるみたいな。

そうだね。多分結びつけちゃう人多いと思う。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

僕らが今から話すお話って、あくまで原料の毛の一本の話ですね。

うん、全然糸とは関係ない。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

そうですよね。もう一個勘違いしがちなことがあって。番手のことが頭が入っちゃってると、長さの話が出てくる。これから話すことは長さも関係ない話ですよね?

長さも関係ない。本当に、あくまで毛一本の話。

ターさん
ターさん

普通の梳毛を引くのにも、例えば1/48の梳毛を引くときにどうしても何本かで束ねないと、すぬけちゃうんだよ。細い毛であればそれだけ細い糸が引ける。例えば糸の強度を保つために細い毛を100本束ねないとすぬけちゃうよといったときに、細ければ100本でも細く上がるし、太い毛で100本やればそれだけ太い番手になっちゃうよねって話。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

逆も考えられますよね。この前、長さと重さのバランスの話をしたじゃないですか。番手を簡単に太さだと捉えた時に、48番の太さにするために、太いマイクロの毛を使うなら、少ない本数でできちゃうけど、細いマイクロンの毛を使うなら、48番にするためには、それよりももっとたくさんの毛が必要になる。

さっき言ったように、毛同士の摩擦抵抗、ウールの表面のスケール(鱗)の、摩擦抵抗ですぬけないようにしているので、本数が少ないとすぬけちゃう。そういう時には、32番しか引けないとか、20番しか引けないとかそういう話になってくる。60番だ、48番とかになると、なるべく細いマイクロンの毛を使って、逆に番手が太くなれば太くなるほど、原料も太いので巣抜けない。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

そうですね。日本語だと繊度って言うんですよね。マイクロンは結構身近な言葉になったように感じます。時々アパレルブランドさんも謳ったりしていますよね。

あとね、細い原料で太い糸を挽くと膨らみがなくなっちゃうんだよ。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

ほお。それはちょっと面白い話ですね。

あんまり細いやつばっかりだと、そのときの本数、例えば細い毛で20番挽いたときに、本数いっぱい必要なわけじゃない?そうすると逆に言うと膨らみがなくなっちゃうんだよ。密集しちゃうから。だからそういうときはマイクロンが太い毛を使った方が膨らみが良かったりする。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

そういう違いもあるんですね。細いマイクロンほど良い原料みたいな言い方をしますけど、それに限ったはなしではないってことですね。

毛が細くて柔らかいというのがまず一番。細ければ細いほど柔らかいんだから。ただ糸を引くときにそれだけを全部使って、16.5マイクロンとか細いマイクロンだけを使って糸を挽くよりも、ちょっとそこに18.5マイクロンとか19.5マイクロンを少し入れてあげると、その18.5とか19.5ってハリがあるから膨らむんだよ。だから、もともとの16.5の柔らかさに、そこにちょっとした味付けみたいな、隠し味的に、そういうちょっと太いマイクロンを入れてあげると膨らみが出るから、より柔らかくて膨らみのある糸ができる。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

柔らかいだけだとシナシナになっちゃうんですね。
あと、もう一個勘違いするやつが、スーパーなんとか表記です。

あーあるよね。それはあくまでマイクロンをベースにしてスーパーなんとかが決まっているようなもんだよ。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

そうですよね。
僕、昔、ターさんに教えてもらったのが、マイクロンは表現としては糸まで。で、スーパー何とか表記はその糸を使った生地の話だと聞いたんですけど。
もっと言うと、織物のスーツ地とかでよく使われるじゃないですか。織り方もあるんでしょうけど、その原料を使った生地のことだよって昔、教えてもらったことがあったんですよ。覚えてますか?

そんなこと教えたっけ(笑)
前にニットマガジンに書いたことがあったんだけども。基本的な話をすると、スーパー・エクストラ・ファイン・ウールというのは、16.5マイクロンから17.5マイクロン。次にエクストラ・ファイン・ウールというのは、18.5マイクロンから19.5マイクロン。エクストラ・ファイン・ウールは20から21マイクロン。その次がミドル・ウール。20から22マイクロン。ストロング・ウールは23から25マイクロンと決められている。これと同じように、モヘアもやっぱりあるのかな。モヘアの場合って、メリノに比べてもともとの毛が太いの。モヘアで一番細いのが一般的にあるのがスーパーキッドモヘアっていうんだけども、大体25から26マイクロン。さっきのウールから比べたらかなり太いでしょ。さっきのストロングウールよりも太いの。その次に、これも同じで、スーパーキッドモヘアからキッドモヘアになる。それが27から31マイクロン。次がヤングモヘアって、32から34マイクロン。その後にアダルトモヘア、35から38マイクロン。この辺になってくると毛がかなり太いので、衣料用っていうよりも、どちらかというと、絨毯やカーテンとかに使われるケースが多い。太い毛は太い毛なりに、用途も変わってくる。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

動物によって、そもそものマイクロンが違うって感じですね。
ちなみにカシミアってどのくらいでしたっけ?

カシミアは一番細いやつは14くらいかな。でも一般的にはもうちょっと太いかな。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

なるほど。
あとは柔らかさとか膨らみは、ちょっと毛質の話になりますよね。今日の話とはずれちゃうんで、あくまで今回はマイクロンの話だけにしようと思います。
あとはさっき教えていただいたウールの方のスーパーエクストラファインとかってメリノウールに限った話ですよね?

そう、メリノウールの話。ブリティッシュウールとかだともっと太いからね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

確か30マイクロンくらいでしたよね。さっきのスーパーエクストラファインウールとかストロングウールみたいなのはメリノウールの話として覚えたらいいんですかね?

やはり羊の種類って3000種類くらいあって、一番太いやつはカーペットウール。モヘアの話の時にも出てきたけど絨毯だったりとか。まず服にはならない。硬すぎる。そういうものだとチクチクするんだよ毛の先が肌を刺して。

ターさん
ターさん

また一つ余談なんだけども、昔、強撚のウールを頼んで作ってもらったらすごく高かったの。なんでこんなに高いの?どうせ強く撚っちゃうんだから、そんなにいい原料いらないんじゃないの?って言ったらそれが違うんだって。太い毛でやるとどうしても途中ではみ出した毛が肌を刺して、それがもうチクチクして痛くてどうしようもなくなりますよって。だから強撚を作るにはいいウールじゃないとだめなんだって。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

そうなんですね!田﨑さんも昔に会社に入られた時って繊維業界ではマイクロンが共通言語でした?

そうだね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

僕はまだ一個理解できないのが,田﨑さんも確か話す前に,梳毛屋さんと梳毛の糸を作るために糸の設計を考えた時に、「ロクシ」とか「ゴハチ」とかって言葉出てくるんですけど、あれって多分マイクロンの話ですよね?

あれはちょっと俺もわかんねぇなぁ~

ターさん
ターさん
佐野
佐野

48に対してこの原料でっていう何かの組み合わせの話なんだと思うんですけどね。

紡績さんはそうやってよく言ったりするよね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

そうですよね。今度それちょっと聞いてみようかな。

かなりマニアックな話になるね。(笑)

ターさん
ターさん
佐野
佐野

何マイクロンの何番手を挽きたいです、の多分別の言い方なのかなぁと思っているんですけどね。日本なりの。
これが昔に面白いなって思ったんですけど、全然理解できなくて、今も分かってないんです。
しかもそれが原料相場とも直結してるみたいで。ちょっと僕あんまり知らないんですけど、羊の毛の値段って相場で変わるじゃないですか?

これは、麻にしても綿にしてもそうなんだけども、羊もある種、農産物と同じみたいなところがある。天候によって左右されたりとかね。オーストラリアで適度に雨が降って日が出ると、牧草ってすごく育つじゃん?それをいっぱい食べちゃうと太い毛になっちゃう。栄養を取りすぎちゃうから。
だから原料メーカーは、あの農作物と同じような感覚なんじゃないかな。その年によって出来が違う、みたいな。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

昔、ウール原料の相場も新聞に載っていたと聞きました。

毎年紡績メーカーが、今年の48の梳毛はいくらですっていうのを発表してたよ。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

多分その時に、ロクシって言葉とかが一緒に出てたらしいんですよ。

48梳毛、今年はいくらって出すと、一社が出した後に、その後何社かの値段が上がってたりとかあったな。一番大きい会社さんは、例えばそこは制服を多く作っていたから、わりかし値段をオープンにしても別に問題なかったんだよね。
そこが値段出したから、じゃあ次の会社はこの値段。他の会社はじゃあうちはそれよりもちょっと高めなんだけども、いくらですっていう感じで値段をオープンにしてた。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

へ~今じゃあまり想像できないですね。昔って今ほどマイクロンの分類って細かくなかったんですか?

あったんとは思う、たださ、例えば48の梳毛を引くのに、ラム梳毛っていうのもあるし、普通のレギュラーの梳毛もある。そうするとラム梳毛のほうがマイクロンが細いものが多く入ってる。だからラム50、ウール50とかって言ったりした。逆にもっとラムが70でウールが30とか。逆にラムを少なく30にしてウールを70にしたりとかね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

そういう言い方ってなんか今聞くと新鮮ですね!僕らはもうマイクロンで話してしまう。16.5マイクロンの48だよみたいな言い方。それを昔はラム梳毛です、みたいな言い方してたんですもんね。

昔はラム梳毛ってよく言ってたよ。
当時は必ずラムが何%、普通のレギュラーウールが何%っていう形で表現していた。紡績さんによってラム梳毛って名前で出しながら、例えばある一社はラムが60%,これは柔らかい。もう一社はラム50%、レギュラーウール50%だとすると、少し太い毛が入っているからふくらみがある、とかね。そういう違いを各社出していた。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

あと、羊の育て方とかでマイクロンに違いは出るんですか?

オーストラリアって広大じゃない。平らな土地で平らなところで牧草も結構入っています。それに対してニュージーランドって山岳地帯が多いんだよね。そうするとそういうところの方がやっぱり草が生えにくい。で、しかも寒い。標高が高かったりするから。そういうところの方が餌もあんまり取れない。で、寒いければ自分の体を保つためにより細い柔らかい毛になる。つまり育つ環境によっても毛質もずいぶん変わってくる。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

なるほど。言われてみれば当然だなって前は思ったんですけど、羊一頭から取れる毛が全部同じマイクロンではないわけですよね。背中の毛とお腹の毛質が違うとか。前に紡績さんに伺って教えてもらったんですけど、首ぐらいから背中にかけては長くて綺麗な毛が生えていて、その毛はどっちかというと梳毛に使われて、お腹回りとか足回りとか、ちょっとクリンプがあるような感じの毛は紡毛に使われることが多いよ、みたいですね。

そうだね。でもどうしても雨風が背中だと当たるじゃない?だから体を守るために毛は強くなって、逆にお腹の方はそういうのが当たらないから、柔らかい、みたいなこともあるよね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

ああ、そういう考えも確かにありますね。
いや~毎度のことながら、キーワード1個でも長く喋れるもんですね。

これまでの経験から得た知識の蓄積だね(笑)
前にはこの辺にも染工所があったり、巻き屋さんがあったりで。そこ行けばいろんなことを見ることができた。そこで一個ずつ、ちょこちょこっと覚えていったんだよ。原料を直で触れたりさ。
今はあんまり身近じゃないよね。完成した染糸が届いちゃうわけだから。
前には国内生産もすごく多かったから、やはりその中で冬物というと、一番の定番の素材は梳毛。その中でもいろんなものを扱ってきたから。どこどこの紡績さんのこれがいいとか言って各社で取り合いしたりとか、そんな時代だったなぁ。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

今回はマイクロンの理解も深まってよかったです。

お役に立れれば。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

ありがとうございます。次の回どうしようかなぁ。動物系のマイクロンはすごく理解しやすいんですけど、これが綿になると全然わからないんですよね。

綿のマイクロンって、イメージないな。どっちかっていうと、綿の場合は超長綿とか中長綿とか、繊維の長さの話になるよね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

ちょっと考えが違うんでしょうね。当然、多分繊度っていうものもあるんでしょうけど。

前に一度調べたことがあるんだけど、綿の種類はほぼ一種類らしい。もともとは。それがアメリカとかインドとか中国とかエジプトとかで栽培するとどうしても気候が違うんだよね。そうすると育ち方が違う。
日本のお米だって野菜だって、その土地によって変わってくるじゃん。それと同じだよ。そこの土地に合った生き方育ち方をしていく。
だから、やはり同じ種類の羊でも育つ環境によってクリンプ性が強かったりとか違いは出てくるんだよ。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

ヨーロッパとオーストラリアとニュージーランドとでは毛質全然違いますよね。
今回もすごく勉強になりました。ありがとうございました!

まとめ

◎マイクロンは毛の太さの単位のこと

◎マイクロンの数字が低ければ低いほど細くなる

◎マイクロンが細いものを使えばしなやかで柔らかい糸になるが、最終的に太い糸になると膨らみが損なわれ逆に風合いは悪くなる

結び

牧場にいる羊を触ってみると、今回の話を体感することができます。

私が以前牧場で触った時は、背中はゴワゴワと、お腹はフワフワとしていました。

赤ちゃん羊は全体的に柔らかく、触っていて気持ちよかったです。

以上、マイクロンについてのお話でした!

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BOND 48/60

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