【教えてターさん!】番外編・北陸出張で見たこと聞いたこと
- 教えてターさん!
- 投稿日:
- 2024-11-01
- (更新日:2024-11-06)
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今回の教えてターさん!は番外編です。
先日、田崎を含め数人の社員が北陸の糸作りの現場見学に行ってきました。
そこで見たこと聞いたことを振り返りながら、雑談の中から生まれるアレコレを発信できたらと思います!
それではどうぞ!
※個人的な見解が含まれる場合がございます。あらかじめご了承ください。
きっかけが、この間、田崎さんにちょっとだけ出張の話を聞いたんですけど、 田崎さんもすごく新しい発見が多くて、 まだまだ知らないことがいっぱいあったという話があったので、 それを小林さんと片野さんの目線も交えて話せたら、 結構これはコンテンツとして面白いんじゃないかなと思って、 お声掛けさせていただきました。 記憶を掘り起こしながら、 北陸の出張の話を聞きたいんですけど、 3日間でしたっけ。富山と石川?
福井と石川に行ってきました!
その中で何件くらい行ったんですか?
三件ぐらいですね。
大きく分けると、福井ではなにに特化していて、石川県はこういうのが得意みたいな地域特性とかあるんですか?
今回染色工場は行ってないんだけど、一番初めに行った福井の工場さんは長繊維の撚糸工場さん。 ここは初めて行ってきたんだけども、デニットがあって。デニットって横糸だけかと思ってたら長繊維の世界にもデニットがあるんだよね。びっくりした。
へぇ~!そうなんですね!
最初に行った福井の工場さんで、デニットのハンガーがいくつか掛かってあったんですよ。 なんか表情があって面白いなって見たらデニットって書いてあってびっくりしました。
そのハンガーってどういう状態なの?織物のテキスタイル?
織物が多かったりで、一部丸編みがありましたね。
あ、そうか丸編みか。 横はないですよね?
横はなかったですね。
産地的には横はないって考えてもらった方がいいかもね。
布帛とジャージ。丸編みの世界。圧倒的に布帛の世界だね。
その中でデニットも割と多いってことですか?
割と多かったよ。デニットって書いてあった。それを見てえ???って思って。 「ちょっとすいません、そのデニット見せてください」ってお願いして見せてもらった。
デニットはポリエステルですか?
圧倒的にポリエステルが多かったな。
あとは一番初めに見たところが得意なのが、キュプラとかアセテートとかもあったな。
トリアセテートのデニットとかありましたよね!
北陸の産地からすると、トリアセって普通なんですか?
うん、扱ってるよ。
僕らニットで言うとちょっとレアキャラ扱いじゃないですか。でも使いたいって要望も結構ありますよね!
トリアセテートって35年以上前に結構丸安毛糸で売ってたんだよ。そのあとはあんまりトリアセテートってあまり触れ合ってこなかったけどね。
何かトリアセテートのイメージ的に、アクリル長繊維とかと一緒で、 大きいメーカーさんの原料が作れなくなっちゃって、 仕入れられなくなっちゃって、使えなくなったものの一つだと思ってました。
原料のトリアセテートを三菱がやってたんだよね。 当時その三菱のトリアセテートを多く扱ってた会社もあった。
それ工場さんだったんですか?
撚糸屋さん。 そこから買ってたのかな、当時は。 その会社が無くなってしまって、 取引も当然無くなってしまって、扱わなくなったような感じかな。
なるほど。 ちょっとお話を戻すと、 デニットもトリアセテートとかも、 僕らで言うデニットもちょっと違うジャンルのデニットのことだと思うんですけど、 デニット以外だと、そこの撚糸屋さんはどういう撚糸があるんですか?
日本の混繊糸がありましたね。エア混繊ってやつです。 収縮差を持たせて、最終的に編んだ時にチリチリとした梨地みたいなものがありました。
収縮差を生かして吸水速乾性とかを出す生地とかを作ってましたね。
レイティックとかベンソロってそっち系ですよね。 だけどあれは最後ストレートになるようにしてますけど、 その先があるんですね。チリチリってなるように。 いろいろとあるんですね。エア混繊の形状って。
僕らが思ってた、ただ絡ませるだけじゃなくて、絡ませ方にも強弱があるみたいです。ソフトタスランとか。
エア混繊の設備は見れたんですか?
直接は見られなかったですね…泣
構造的にはどうなんでしょう?僕、先日トライスピンの現場を久々に見てきたんですけど、 あれも糸のわたを入れて撚っていくじゃないですか。 あれと感覚近いんですか?
これは直接見たわけではないので何とも言えないんですけど、 構造上は、なんか筒みたいなものが入って、横から風を当てることをインターレースって言うんですよね。
へぇ〜!本当に空気が入るんですね!
入れるっていうより横から当てるらしいんですよ。
それで接着されるんですか?
絡むって言い方ですかね。 垂直に当たるのをインターレースって呼んで、平行方向に風を当てるのをタスランって言うんですけど。
へ~!専門的すぎる…!!!!もう一回聞いていいですか?
綿が入ってきて、横から垂直方向にエア圧を当てるのをインターレース加工。 進行方向に平行方向で当てるのをタスラン加工って言うんです。
エアーが入ったところが絡んで、点と点でポイントとして絡むんですかね?
おそらくインターレースはそういう感じです。
篠と篠があってそれが絡むって感じ。
ということは、途中で絡んでない部分もあるということですね?
もちろんあります。
全部きれいに混ざってるかって言うと、そうじゃないってことよ。
極端に言うとエアースプライサー的な感じですかね。
インターレスは、本当に極端に言うと、ウィンナーみたいな状態ですよね。絡んでるところと絡んでる。
あぁ~(笑)(←多分あまりイメージがついていない)
本当に極端に言うと、ですよね。
わかりやすいですね。(←本当ですか??!?!)
例えばレーヨンとポリエステルをインターレースで作るとした場合、 両方とも長繊維のわたがあって、引き揃えた状態で空気を当てる。
そう。で、混ぜるんだけども、さっき言ったように、 それが均一になっているかというと、なっていないんだよ。 前にエア混繊素材でオパール加工をしたことがあったんだけど、 綺麗に混ざっていれば、綺麗なオパールができるんだけども、 レーヨンの多いところがあるとうまくできないときもある。染め分けするときもそうだね。杢染めとかやった時にも綺麗に出ないときがあるね。
なるほど。勉強になります。 今回はエア混繊とデニットの設備をお持ちの工場さんに行ったってことですね。旭化成さんがあるぐらいだから北陸ではこういった技術は盛んなんですかね?
盛んなんだと思う。
今度できれば北陸のヤーン展に行こうかなと思ってるけども、やはりヤーン展には色んな会社が出てる。 旭化成さんも当然出展しているし、 いろんな大きい会社が出展しているらしいね。
以前北陸ヤーン展のやり始めの時に見に行ったことあるんですけど、 地場の工場さんの展示がとても面白かったんですよね。PUカバリングとか。 石川県とかが結構多くて、ゴム糸を作る人が多い。 それで折りテープとかやってる織物屋さんがあったりとか。なかなかいつもは見られないものがあって興味深かったです。
福井県ではその後どんな感じだったんですか?
福井は今話した工場さんだけ。資料を見てきた。工場の中は今回はちょっと見られなかった。
田崎さんはエア混繊自体は見たことあるんですか?
ないよ。
なんせ今回が初めてだから。長繊維の出張。
レイテックってうちでブックでやってる素材の中で一番古いじゃないですか。 もう40年くらいになるんですか?
40年弱くらいになるよね。
レイテックってうちのブック素材、カラーブック素材の中で一番古いんだよ。
最古参なんですね。
片野さんも北陸初めてですよね?
初めてです!
そうですか。長繊維の撚糸が見れて、デニットとエア混繊も話を聞けて。 デニットは結構使っている原料が横とも違うし、 エア混繊も想像以上に種類が豊富だったんですねいずれ作っているところ見てみたいですね。 企業秘密なんですかね?
改造機多いみたいなんで、 改造しちゃうところって見せられないんじゃないですかね。
そうですよね。 僕の余談なんですけど、 先日ある撚糸屋さん行って、何回もそこは行ってるんですけど、 説明受けてびっくりしたんですけど、 リリヤーン機、完全に手作りだったんですよ!
<<企業秘密の話>> なんですって!
すごいですよね。
石川県ではいかがでしたか?
仮撚りをやっている工場さんを見せていただいた。月産1000トンの仮撚りをやってる工場さん。 すごい世界だよね、1000トンって。 それがもう、毎日出荷されている。 工場も24時間、3交代制。お盆休みとお正月に何日かあるだけ。 ゴールデンウィークもずっと回しっぱなし。 それ聞いただけでも、まだ繊維でこんな世界が残っているんだって驚いた。
全自動になってたんです基本的に。 原料かけるとこは手でかけるんですけど、それ以降全部出荷まで人の手がほとんどかからない。 工場の広さに比べたとも、工員さんが結構少なかったですね。
へ~!全自動ってどういうことなんでしょう?
今、片野さんが言ったように、糸をかけるところは手でやるけども、 あとは人の手が加わると汚れたりとかなんとかってしたりするといけないから、 梱包のときも何も全て機械がやる。
梱包も機械なんですか!?
梱包も機械。
ダンボールを作る機械もあるんです!工場の上にレールが通ってて、加工し終わった糸とかが移動して〜みたいな感じで。
すごかったですね。 本当に人が必要な場面っていうのは、例えばどうしても合繊のもので、 色がMLD(生地糸の白の濃度差)って分かれるんだよね。白でも段階がある。 それをもう熟練のパート3人が色を区別している、それぐらいじゃないかな。
へぇ〜じゃあやっぱり技術がないとそこに残れないんですもんね、機械と戦っていくと。
うん、そこだけは機械ではまだちょっと判断できないみたいだよ。
片野さん、仮撚り、どうでした?
言葉だけは前からなんとなく聞いてた。 POY(ポイ)っていう原料(仮撚りする前の原料)。それに熱をかけて、この仮撚りの膨らみを出してるっていうところの工程を見せてもらいました。構造とかもよくわからなかったんですけどそういったところを見せてもらえたので、非常に勉強になりました。
実際に見るとびっくりしますよね。天井も床下も全部使うみたいな!
上から下までグルグル行きながら。 ぐるっと一周回って糸ができる。 あれもたぶん短繊維だとあまり見られない光景ですよね!
ポリエステル原料って、仮撚りして膨らますじゃないですか。 フィラメントカウントって、そのPOYの時点で決まっているんですか?
決まっていますね。 フィラメントカウントごとにPOYが存在します。
原料の種類が2つあるんですよ、ポリエステルって。 半延伸、伸ばしきってない状態の原料をPOYって言うんですね。あとは完全に伸ばし切っていない、FDYっていわゆる生糸があるんです。
ちょっと僕この勉強不足なんですけど、DDWってあるじゃないですか。あれは加工糸の後の工程ですか?
そうですね。僕らも直接は見てないんですけど、加工糸にさらに強烈に撚りを入れるらしいんですよ。 グワーッと入れて、またソフトに巻くみたいなことらしいんですよ。 DDWも全部のポリエステルにできるわけじゃなくて、加工をした上で、なおかつそこから縮む余地がある原料じゃないとDDWの加工ができないんです。
加工糸は最近POYが多い印象ですね。
じゃあ僕らが身近なものはPOYかもね。
POYが多いと言われるんですけど、その中でもさらに細かく分けられていて色々種類があるみたいですよ。
なるほど。奥深いですね。
ストレッチ性も生むためにも色々やり方があるみたいです。
例えばうちでやっているプルーフプラスのアルファとストレッチ。 あの差って僕、、、、、
<<しばらく企業秘密の話なので割愛します。>>
あと今回見れてないと思うんですけど、ポリエステルの先染めについて。これまでの話を聞くとPOYという原料もあって、仮撚りの中間工程もあって、 その後にカセやチーズの形状になるじゃないですか。どこの工程で染色をやってるんでしょうね?
紡糸のタイミングで色を入れるらしいんですよ。ポリエステルを最初に。POYを作る前に完全な原料の段階で。溶液の中で紡糸するみたいな感じですね多分。 いつかポリエステルの先染を見てみたいですよね。 都内でどこか見られないですかね。
いや~ここらへんではやってないんじゃないかな。
今回、他に何か驚きとか印象的なこととか勉強になったことはありますか?
実は今回面白い発見がたくさんあったので早速試作に入ってるんですよ。
完成楽しみにしていてください!
片野さんはどうでした?なんか印象的だったものとか。
私は工場の規模がすごい大きいっていうのと、 短繊維と違って風綿が全然飛んでないので工場がすごい綺麗だったことに驚きました。ほんと床に何も落ちてなくて、しかも全自動だったりっていうところで、 やっぱり同じ繊維でも色々違うんだなっていうのを感じましたね。
ですよね。 なんかあれ見るだけで結構感動しますよね。
そうね。 綺麗すぎて。
全自動の仮撚りって、最終形態ってチーズもカセも両方あったんですか?
いえ、チーズだけでした。
チーズって何キロ巻きでした?
8本で1箱になってたからね、20㎏とか? 20㎏よりもうちょっと大きかったような気がする。
短繊維では見ない大きさだったね。
原料は15キロ巻きのコーンのようなものでした。
そのかたまりがPOYでした?
はい、POYでした。
片野さんは梳毛のTOPって見たことある?
いえ、梳毛のTOPは見たことないです。
梳毛のTOPもコーンには巻かれていないんだけど、 10㎏ぐらいの巻きなんですよ。
見た目はそれとなんか近い感じなんですかね?
梳毛のTOPは膨らみがあるじゃないですか。
POYはもっとペタッとしてて見た目は結構違いますね。
自動化されている設備がほとんどでしたが、POYを機械にかける作業は人の手でされていました。
15kgですよ?バーベルですよね笑 (→小林はトレーニング狂です)
それを一日中扱うんですよね。 すごいですね。
かなりの筋トレになるはずです。
笑
それを機械にかけてそこから仮撚りをスタートさせるんですね!
かなりの時間になってしまったので今回はこの辺で。
ありがとうございました!
まとめ
◎長繊維の世界は非常に奥が深い世界。繊維業界歴40年以上の田崎でも初めて見聞きする事がたくさん!
◎MONTELUCEのレイテックは、丸安毛糸の素材の中でも最古参。今でも現役のベストセラー素材!
結び
いかがでしたか?
同じ繊維でも、原料が違うと現場も全くガラッと違うということが今回3人の話からもわかりました。
本当に、糸の世界は奥が深いですね。
今回はここまで。最後までご覧いただきありがとうございました!