【教えてターさん!】チーズ染めと綛染めについて

  • 教えてターさん!

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教えてターさん!今回はチーズ染めと綛染めについて。

糸の染色方法は大きく分けて2つの種類があること、ご存知ですか?

今回はこの2つの染色方法について、細かく聞いていきたいと思います!

※個人的な見解が含まれる場合がございます。あらかじめご了承ください。

今日は糸の染色について教えてください!染色に関わるキーワードも色々あります。

広い意味で言うと生地染めとか製品染めとかね。

僕らで扱っているのは糸染めで、その糸染めの中でも染料がどうとか色々あると思うんですけど、今日は綛染めとチーズ染めをテーマにお願いします。
まずカセ染めとチーズ染めはそもそも何ですか?

綛染めとチーズ染めはもうその名の通り、綛の状態で染色するのが綛染め、コーンに巻いてある状態で染色するのがチーズ染め。染色の方法というのはこの2つ。あともう一つ、回転バックってあるんだけどもこれは今はもうほぼどこの工場にもない。あっても使ってないという形です。現時点は綛染めとチーズ染めの2種類って考えてもらっていいかな。

https://chakyu.co.jp/contents/tech_senshoku.htmlからお借りしているチーズ染めの画像。
綛染めの画像

糸を染色する時の形状というか状態のことを指す認識でいいですかね。

そうだね。
綛染めとチーズ染は何で使い分けるかっていうと、まず一番簡単なのは、太いものは綛染め、細いものはチーズ染め。あと、糸に形状があるものは綛染め。
それはなぜかというと、糸に形状があるものをチーズの形に巻くと隙間ができちゃうからそこに水が流れちゃうんだよね。そうするとその周りだけが濃くなって、それ以外のところが薄くなっちゃう。そうすると染色の質が安定しない。チーズ染めの場合はコーンの中から染める。だからジュワーって外に染料を流し込んでいく、浸透させていくっていう方法。
大きく分けると、そういった太いものと細いものの違い。それとあともう一個大きなポイントとしたら、綛染めの場合は風合いを重視する素材のときに使われる。良いウールだとか、モヘアだとか、ああいった風合いを重視するやつは、より綛染めで染色した方が風合いが良いかな。
チーズ染めだと、どうしても糸を強くコーンに巻く。そうしないと綺麗に染料が浸透していかないんでね。ある程度しっかりと巻いていくから、糸が伸びた状態でそのまま乾燥して、そこからコーンアップ、なんてことすると糸が伸びた状態になっちゃうんだよね。綛染めの場合は染色して、脱水して、乾燥して。で、コーンアップする間に多少の糸が寝る時間があれば、そこで糸が膨らむので、より風合いの良いものができる。

なるほど。じゃあその番手の中でも細い太い糸で分けるのと、形状がついているかそうじゃないかと、どこまで風合いを重視したいかが大きく分けて三つのポイントで綛染めにするかチーズ染めにするかを分ける。
で、これ、そもそもどうして分かれているんですかね?2種類存在するというのは糸作りにおいてずっと昔からあることなんですか?

僕が入った時からチーズ染めはあったけれども、従来の昔からある方法としたら綛染め。その前はさっき言った回転バック。回転バックというのは、簡単に言ったらお風呂みたいなところに染料で全部いっぱいにするんだよね、風呂桶にいっぱいにするようにして。そこの中に糸をつけ込んで、糸が泳がせるみたいな感じ。

https://bishu-japan.com/company/detail/34/technology/167から回転バックの画像をお借りしています。

例えばお風呂に入った時に髪の毛の長い人は、ふわふわふわふわ髪の毛が浮くじゃない?ああいうように綺麗に染色できて、そして絡まない。どうしても回転バッグだとか、綛染めの機械だとか、綛染めの機械は噴射の機械って言うんだけど、それだと上から下に流すんで、どうしてもペタッと潰れちゃうんだよね。だからシャワーで髪の毛洗って流した時に、全部一方向に揃っちゃうでしょ?
ところが湯船に浸かっている時は髪の毛が泳いでるじゃない。その差かな。だけど回転バッグの染色機はとても古い。染色方法としたらいいんだけども、お金がかかるのよ。染料も沢山かかるし、水も沢山使う。だから高い染色代になっちゃうんだよね。それと今の時代で言ったら、全くエコじゃないよね。染料を多く使って、水を多く使う。エネルギーも多く使う。    
僕が入った時、チーズ染めはあったけども、どっちかというとやはり, 細い合繊ものとか、綿はチーズ染め。ウールについては、当時は両方あったんだけども、48番の梳毛とかラムなんかは、綛で染めたり、チーズで染めたり。ただ、やはり綛で染めたものとチーズで染めたものとだと、風合いは綛染めのほうがいい。
ただ綛染めには問題があって、綛で染めると1カセ250gとか200g。だからコーンアップの時にどうしてもつなぎ目が1コーン(=1kg)の中に3カ所ないし4カ所できちゃう。チーズ染めの場合はその繋ぎがないんだよね。綺麗にノンノットで出来上がるので、編み上がった編み地が綺麗だったり、工場さんもそういった繋ぎ目で切れるとかっていうことがない。

綛上げの風景写真

あとはやはりスピードの問題で, チーズ染めの方が早いんだよね。巻き上げるのに人の手をそれほど必要としないしね。 カセの場合は人が綛繰り機、コーンアップ機で付きっきりで見てなきゃいけない。だけどチーズの場合は糸を巻く時に、機械にかけてしまえばもう最後まで自動で巻き上がる。だからそこの工程に人がいらない。だから効率化を考えるとチーズ染めの方に軍配が上がるかな。

染色の時間は一緒くらいなんですか?

それはだいたい一緒だね。
例えばウールなんかは、徐々に徐々に温度を上げていって、100度で煮込んで、(色によって多少時間は違うけれども)そこで煮込んで、ゆっくり冷やしてその後洗う。それはもう綛もチーズも一緒だね。

なるほど。煮込む時間はだいたい一緒。その後のコーンアップで工程に差が出るんですね!今日はちょっと単価の話も触れようかなって思ったんですけど、今のお話を考えると。チーズ染めの糸の方が少し単価も…?

うん、そうだね。
やはり人件費って大きな問題になってくるので、チーズ染めの方が多少100円だとか、安い場合があるよね。

なるほど、ちょっと変わるんですね。ありがとうございます。チーズ染めと綛染めで使い分けるポイントがよく分かりました。アパレルブランドさんから、この素材は綛で染めてください、とかチーズで染めてくださいとかそういったリクエストはあるんですか?

今はそういった例はないかもわからないけども、昔はあったんだよね。うちの48のは絶対に綛で染めてくれって。以前はあったな。

発色性の違いもあるんですかね?

まあ発色性はそれほど変わらないかな。綛で染めたやつもチーズで染めたやつも。例えばウールの綛染専用染料があるとかではなくて、ウールの染料自体はは同じウールを染めるんだから一緒だと思う。

なるほど、では以前の綛染めの指定があった数社のお客様がこだわっていたのは風合いなんですね。
あとちょっとお話戻して、効率の話をしていた時に出てきたコーンアップのところなんですけど。
糸を売っているとコーンアップに対する設備背景的な懸念がついてまわります。この辺ちょっとお聞きしたくて、要は綛で染めた場合、綛繰り機にかけて、1カセが200から250gを1kgになるように繋いで巻いていくというコーンアップが必要ですよね。
チーズ染めも、コーンになっているとはいえ、染色用のコーンとお客様に納めるコーンで形が違くて、その工程で巻き返しが必要じゃないですか。要は両方とも巻きの工程が入ると。この巻きの現場は何で少なくなってきちゃってるんですかね?

その当時はニット工場さんにだいたいコーンアップ機があったんだよね。
メーカーさんにあったので、僕たちはここからカセで出荷して、工場さんが編み立てる2、3日前にコーンアップする。そうするとより良い風合いで編みにかけられるというのがあった。そしてバブル時代では物をいっぱい作っていくような時代になったときに、それが間に合わなくなっちゃった。チーズの糸もカセの糸も、一番初めに出来上がるのはコーム状態で上がるよね。それをカセにするには、綛繰りをしなきゃいけない。で、カセで染めて巻かなきゃいけない。
チーズの場合は糸が上がったときに、巻いた状態で上がってきて、そのままPPコーンに移して染色して、乾燥してPPコーンからまた巻く。だから手間がかかんない。よりスピードを求められた時代だったのかな。そういうこともあったので、チーズ染めの機械がどんどん増えていった。いまだにヨーロッパのほうは綛染めのほうが多いよね。

確かにそうですよね。やはり風合いも大事にしている。
今チーズ染めのほうが日本は多い?

多いですね。圧倒的に。

一件の染工所さんはカセ染めかチーズ染めかどっちかの設備に特化されていることも多いんですか?

大体はそうだね。前まではチーズとカセと両方やっていたという工場も結構あるけれども、今はチーズとカセがあった場合には、チーズを残してカセをやめるということもある。
チーズをやめてカセだけ残すっていう染工所さんはないよね。

そうなんですね。やはり効率性が大事なんですね。ありがとうございます。
あとは、糸染めって僕たちニット業界だと普通じゃないですか。これが布帛の業界とかカットソーの業界になったりすると、糸染めのことを先染めって呼びますよね。
生地染めが主流としてあるからって今は想像してるんですけど、普段染工所さんと話してるときに、織物の先染め糸はチーズ染めが多いなって思うんですよ。なんとなくチーズ染めが織物に使われていくっていうのは、ちょっと想像がつくんですよ。細くてストレート形状の糸ですもんね。
綛染めの糸を布帛とかカットソーの生地に使うことってあるんですかね?

例えば2/48の梳毛で考えたときに、織糸、それからジャージ用の丸編み用の糸、それと横編み用の糸って、撚り回数がそれぞれ違うんだよね。やはり布帛用の縦横の糸の場合は強度がないといけないので撚り回数が多いんだよね。

横編み用より強度が必要?

布帛用が一番撚り回数が多くて、その次がジャージ用の丸編み用。ニットってあくまで風合いを重視するものだから撚り回数が少ないんだよね。だから逆にその撚りの少ないものを布帛用の織糸に使っちゃうと糸が抜けちゃうっていう危険性がある。だからちゃんと織糸使用なのかジャージ用なのかニット用かって分けないとダメだね。

そういう意味でいくと綛染めはほとんどニット用なんですかね?

そうだね。でも横糸には使えるんだよ。布帛の縦糸は非常に強くなきゃいけない, 横糸に関しては多少撚りが甘くてもそこまで負荷がかからないので、逆に風合いの良いものを使って柔らかい生地を作ったりできるよね。ただスーツみたいなものとかっていうのは やはりある程度強い糸でやらないとダメかな。
まあ、衣料だけじゃなくても、それこそカーテンだとかなんとかといったら風合いとかって必要ないんで、強い糸でやってしまえばっていうのが、織るのも楽だよね。切れる心配ないからね。

ありがとうございます。ちょっと興味深い話が聞くことができました。
チーズ染めとカセ染めの使い分けが今回のテーマでした。
次回以降、カセ染めのその工程的な部分とか、チーズ染めの工程だったりとかは、それぞれでちょっとお聞きしようかなと思います。
今回は以上です!ありがとうございました!

まとめ

◎チーズ染めは細くてストレートな糸、綛染めは太い糸、表情の糸を染めることが多い

◎チーズ染めは綛染めに比べ、効率が良い。

◎綛染めはチーズ染めに比べ、糸に膨らみがあり風合いが良い。

◎日本ではチーズ染めの工場さんのほうが多い

結び

今回はマニアックな話でした。

以上、第四回「チーズ染めと綛染めについて」でした!