教えてターさん!今回はモヘアとナイロンについてです。

皆さんよく、モヘア素材にナイロンが使われているのを目にしませんか?

なんでナイロンが入っているんだろう?モヘア100%で作ればいいのに、なんてこと、思ったことありませんか?

今回はナイロンがなぜ使われているのか?について、聞いてみようと思います!

※個人的な見解が含まれる場合がございます。あらかじめご了承ください。

今回のテーマは、なぜモヘアタムの糸にナイロンが入っているのかです。
これ結構聞かれるんですよ。モヘアって言葉を使ってますけど、モヘアに限らずアルパカだったりとか、他の獣毛も含め、なぜ獣毛の素材にナイロンが入っているのか?
ナイロンが入っていないモヘアを探しているのかというお客さんは、天然繊維にこだわりがあったりとか、高級素材志向だったりとか、というケースがあると思うんですけど、よく聞かれるのが「せっかくモヘアをたっぷり使っているのに、ナイロンを入れて安くしてるんですか?」ということ。
その辺の整理をしていただきたいなと思っています。まず、モヘアの糸にナイロンが入っているのが多い理由を簡単に教えてください。

先にモヘアの話をしていこうかな。モヘアで番手的に細いものは、ナイロンの細いものを使わないとループが抑えられない。そのためにナイロンを使うんだよね。
じゃなくて、逆に太い、1/3番手のモヘアタムって、過去にも、モヘアとおさえをウールの梳毛でっていうのがあったんだよ。ただ、ウールで抑えるのに、じゃあなんで細いものはできないのかというと、ウール自体にそんな細いマイクロン(μ)の物は無いし、そんな細いマイクロンの物で糸を作ったらかなり高い物になっちゃう。撚り回数をすごく入れているからね。
その点、合繊であるナイロンは非常に細くて強い物が出来るので、番手で言ったら、どうだろう。だいたい1/6番手ぐらいからはナイロンが入ったモヘアタムだよね。
やはり3番とか1.5番ぐらいだったらウールの芯で抑えたモヘアタムを作る事が出来る。強度の問題。抑える芯の強度の問題でナイロンを使うというより使わざるを得ない。他に無いんだよね。

ありがとうございます。 今、ターさんの話で芯とか抑えとかループとかタムって言葉が出てきました。モヘアってみんな呼びますけど、正確にはモヘアの原料を使ったタムタムヤーンっていう, ファンシーヤーンですよね?

そう、タムタムヤーンっていう形状。

タムタムヤーンって何ですか?

作り方としては簡単に説明すると、モヘアの梳毛でループを作ってそれをナイロンで抑える。で、そのループを引っ掻いて切る。そうすると毛がフワッてなる。その時に芯が強くないと毛が抜けちゃうんでナイロンでギュッと抑える。

いわゆるニットで僕らが一般的に想像するモヘアだねっていうものってやっぱり毛が吹いているもの、毛足がちょっと長いもの、起毛をしたらより良いよね、みたいな感じのものはほぼファンシーヤーンとして作られるタムタムヤーンであって、モヘアのストレートの糸ではないですよっていう認識をしていいですか?

じゃあそのタムタムヤーンを作るときに、ファンシーヤーンの構造上、形状を作ったものに抑える部分が必要だから、固定させるものとしてナイロンを使いたい。ナイロンじゃなくてポリエステルでもいいんじゃないっていう話も出るかもわかんないけど染色性においてモヘアとウールとナイロンって同じ染料で全部染まるから1回で染まるよね。2回染めなきゃいけないと染色剤も高くなるし、まあポリエステルも普通のポリエステルは使えないからね。

なるほど。そういういろんなバランスでナイロンが、染色性、生産効率、実際の価格を考えて最適であったということですね。
ナイロンって僕が持っているイメージとしては、やっぱり良くも悪くも柔らかい。なんか馴染むというか、もしかしたら一番モヘアの風味合いを最後邪魔しないのかなって思います。仮にウールを使って、上がりが13番のモヘアタムを作ろうとした時に、 芯の抑え糸をウール100%にできたとしたら、これって風合いってナイロンに比べるとどうなっちゃいますかね?

いや、ナイロンの方が染色した時に縮むから、より糸に膨らみができるんじゃないかな。ウールでやった時にはそこまで膨らまないんじゃないかな、ちょっと伸び切った状態になっちゃうんじゃないかな。例えば1/13番手のモヘアの話としてね。ちょっと硬いというか、芯が残るというか、あんまり…糸の完成度としてそこまで高くないかな。値段が高いんじゃないかな、できたとしてもね。

余談ですけど、アルパカタムもこの話と一緒ってことですね?

一緒だね。ただ、アルパカかモヘアの違いがある。 それはだから、アルパカの持っている風合いとモヘアの持っている風合いとか、毛の質の違いだけだよね。だから、モヘア素材っていつもモヘア、モヘアって呼んじゃってますけど、正確にはモヘアを使ったタムタムヤーンっていう、モヘアタムって言ってもらった方がいいかもね。

そうですよね。で、そのファンシーヤーンを作るためには、どうしても撚糸の構造上、芯糸が必要で、そこにナイロンを使うことが一応最適なんではないかっていうことでナイロンを使うんですよ。

モヘアタムを作る場合に、先ほど説明したように、それをループにしてナイロンで抑える。ナイロンはやはり細いものがあって柔らかい。染色性にもいいということがあるので、それが一番重宝されている理由かな。

ありがとうございます。それを聞くとファンシーヤーンに代表されるのって、分かりやすいところだとループ、ブークレーみたいな、輪っかを作る形状だと思うんですけど、それ以外にも、最近もうちでやっているノットとかカールとか、あの辺も結局ナイロンが入るんですよね。

やはり一番邪魔しないんじゃないかな、細くて。
ナイロンは一番やはり染色一回で済むので一番便利。

丸安毛糸のタイラントはシルクじゃないですか。シルクに芯を使っているじゃないですか。
シルクを使うとやっぱり値段的に上がってしまうっていうことがあるから、ナイロンっていうことなんですか。

あれはもう高級感を持たせるためにシルク。 1/12のプラチナシルクなんかをシルクで抑えてるんじゃない。で、シルクの場合は長繊維だから。かなりナイロン的な扱いができちゃうんですね。ただ糸値は倍だよね。もう糸では、やはりシルクはめちゃくちゃ高い。長繊維だから細くて、ナイロンと一緒で、ナイロンも長繊維だから細い。じゃあ作ろうと思えば、1/16のモヘアにシルクを使うことは可能だけど、どんどん値段が上がっちゃうってことですよね。現にやっぱりそういう糸も日本には存在している。

そうですね。5品番くらいあるんですかね。それらは、値段は高いですね。
見るからにいい糸ですけどね!
ナイロンの良し悪しってあるんですか?

ナイロンの良し悪しはやはりエコかどうかじゃない?

今でいうとそうなんですかね。ナイロンのエコってまだリサイクルだけですよね。

そう、ない。ナイロンは優れた化学繊維だとは思うよ。強度があるし。だけど厄介なのは地球に戻らない。土に還らない。

アセテートは戻る?

アセテートは戻るね。

でも強度はないんですか?アセテートの方は。

ない。あれももともとは木だから。

ナイロンの欠点は薄い色のものの方が多いということではないでしょうか?

そうですね、あと、ちょっと白が黄色くなりやすいですね。 それ以外は別に非常に強いし良いんだけど、厄介なのは処理方法だよね。

確かにそうですね。ちょっと言い方が悪いんですけど、商品のイメージありますよね。
「ナイロン=合繊だから敬遠する」みたいなことが他の原料に比べると。
話変わりますけど、ターさんの好きな原料ってありますか?いろんな角度でいいんですけど。

原料自体で好きなのはアルパカが好きなんですね。このアルパカの原料ってペルーの標高3000mから5000m近くに生息していて、夏は日中30度、ところがちょっと怪しい雲行きになると氷点下20度まで上がる。そこで生きているんだからね。 だから、暑い時には発散する。寒い時には保温する。凄いなって思ってて。

なるほど。そういう魅力なんですね。

大体寒いところにいる動物の毛は温かくなっているんだけども、羊の毛って言ったら、逆に真夏は刈ってあげないと、羊の場合はバテちゃうからね。 でも、アルパカはそういう事じゃない。一年中もこもこ。毛質が特殊なんだろうね。
モヘアなんかでもそうだろうね。 だって住んでるのは南アフリカ。日中は寒いだろうけど、大陸的なことがあるから夜になると結構気温が下がるだろうね。だからああいう、いい毛ができるんだと思う。

モヘアってチクチクするのとあまりしないのがあるじゃないですか。あれの差は何なんですか?

繊維の太い細いの違いじゃないかな。あとやはりモヘアも子供の時の方が毛が柔らかいんだよね。ベビーキッドモヘアって名前ついているしね原料に。ベビーキッドモヘアはすごい柔らかくてチクチクしにくいよね。

そうですかね。そういう話も関係しているのかもしれないですね。結局モヘアの方がウールより繊維が太いものが多いですよね?

太い。英国羊毛のクラスはちょっと異質かもしれないですけど、近いよね。太い。

ということは毛の先はとんがってますよね?

ベビーモヘアとかは細いから毛の先が肌に当たっても不快感はないんだけど普通のモヘアは太いから肌を刺しちゃうんだよね。これがチクチクに繋がる。

なるほど。敏感肌の方はベビーモヘアを選べばいいんですね。
今回はここらへんで。
モヘアとナイロンの関係についてでした。
ありがとうございました!

まとめ

◎モヘア=モヘアのタムタムヤーンを指すことが多い

◎ナイロンは芯を押さえる用途として使用されている。

◎ナイロンは細く、強度もあり、モヘアと染料も同じため一度に染められる

◎タムタムヤーンなどのファンシーヤーンにおいてナイロンは強度補完の観点から非常に便利!

結び

ファンシーヤーンには欠かすことができないナイロン。

これからはエコなナイロンへの代替えが始まっていくかもしれませんね。

以上、第三回「モヘアとナイロンの関係について」でした。

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