【教えてターさん!】防縮と未防縮について

アバター画像
丸安毛糸 編集部

『教えてターさん!』第2回は防縮と未防縮についてです。

防縮はつまりウォッシャブル、ということ。

「そんなこと言ったら、全部洗えたほうが楽でいいじゃないか!」と思う方もいらっしゃると思うけど、ウォッシャブルにはメリットデメリットがあるんです。

そんなことを今回も、ターさんと佐野の対談形式(途中岡崎が乱入)でお送りします。

※個人的な見解が含まれる場合がございます。あらかじめご了承ください。

今回は防縮と未防縮についてです!

防縮と未防縮ね。

防縮と未防縮って、ウールを扱うときに出てくる言葉ですよね。 あくまでウールの話という言い口としていいですか?
未防縮については、未防縮という言い方をあえてしてますけど要は何もしてないウールってことですよね?

従来のウール、そのまんまってこと。

で、そうなると防縮について教えてほしいんですけどそもそも防縮って何ですか? そういう羊の種類とかあるんですか?

羊の種類とかじゃないね。
ワタの段階で加工する。じゃあなんでそういうものができたかというと、ウール100%の欠点としてピリング、毛玉ができるでしょ・それと洗うと縮むの。それを避けるためにどうしたらいいんだろうということで考えられたのが防縮加工。

へー!どんなことをしているんですか?

もともと毛の表面についている鱗みたいなやつを除去して縮まないように、絡まないようにする。 ウールはピリングができたり縮んだりするけども、それって逆に言うと、それがあるために温かいコートができたりする。昔はウール100%の毛布なんかも厚いものができたりとかそれがいいところなんだよね。でも普通のセーター、家庭で洗ったときに縮んでしまう。 そういうのを避けるために繊維表面の鱗をカットする。そうすると縮まなくなる。鱗同士が絡むのが毛玉だったり縮みの原因になるの。

鱗!?想像がつきませんね。

髪の毛って顕微鏡で見ると表面に鱗みたいななのがあるの、見たことある?羊にも大きなキューティクルの鱗があるんだよ。他の獣毛、例えばカシミアだとかアルパカだとかっていうのは、あるんだけども細かい。 だから絡まない。だから縮まない。まったくピリングができないかというと、多少はできるけども、ウールより全然マシ。

結構歴史はあるんですか?防縮って。

そうだね。今からもう30年以上前にはあったかな。もっと前からあったのかもね。

あくまで原綿の状態で加工する?糸になってからは加工しない?

糸の状態ではやらないな。ワタの状態でやる。
女性のトリートメントなんかだと、やはり髪の表面の凹凸の部分を少なくして滑りがよくさらされる。 そういうような感じです。

鱗をカバーしちゃうんですか?

凹凸を減らすように、人間のトリートメントみたいな形で、そこをかぶせてしまうように。それがよく聞くバロラン加工とクロイ加工。

原料商さんから買うワタは、 防縮済みか、未防縮かを選んで買っているんですか?

じゃないかな、今は。日本の防縮に関して言うと、今はトップっていう形で、撚りは入ってない状態で仕入れるのが多いんじゃないかな。太い糸みたいな状態で。

じゃあ、防縮加工自体は、 オーストラリア産のウール原料だったらオーストラリアで加工してるということですか?

中国産のウールだったら中国でやっていると思う。ワタの生産地で加工が基本だね。

丸安毛糸の糸でも、防縮と未防縮ってあるじゃないですか、防縮でメロウ(https://www.maruyasu-fil.co.jp/departments/monteluce/yarn-collection/703)があったり、未防縮でボンド(https://www.maruyasu-fil.co.jp/departments/monteluce/yarn-collection/693)があったり。 これって一発で見極めるポイントとかあったりするんですか?

光沢が違うかな。防縮ウールの方が光沢があって、触ったときに独特のヌメリがあるんだよ。未防縮の方がふんわりとしてて優しい。 ところが防縮ウールの方は触ったときにちょっとぬるっとした感じがする。

なるほど!だからその滑ることによってピリングになりにくいっていうことがあるんですね!

メリノウールの原料にするってことはわかしました!原料にもクオリティあるじゃないですか。 ヒツジの種類もありますし、仮にメリノウールで絞ったときに、防縮加工に向いているマイクロン(繊維の太さのこと)があるとか、そういう考え方はありますか?

やっぱり一番多いのは19.5マイクロンのものを防縮することかな。で、最終出来上がりを18.5マイクロンくらいに上げる。防縮して表面が削れて細くなるから結果的に18.5マイクロンくらいになる。

細くなるんですね。

だからあんまりいい原料にやったら細くてもったいないし、かといってあんまり太い原料にやってもあんまり効果がない。だからだいたい19.5マイクロンくらいが一番ベストなんじゃないかな。

僕もそう思ってたんですけど、最近輸入糸を見る機会があって、イタリア糸とか中国糸を見てると、16.5マイクロン防縮が多いんですよ。もしくは17.5マイクロン防縮。で、これなんでなんですかって言ったら、いい原料で洗えなきゃ意味ないでしょって言われて。細い原料のふっくらした柔らかい感じ、この糸に防縮加工したらもったいないよねって言っているのは、もしかして日本人だけなんですかね?

いや、それは逆だよ。今、ヨーロッパの人の方が未防縮だと思うよ

えーそうなんですかね。勘違いしていました。

圧倒的に向こうの人は未防縮推しだと思う。なぜかというと、防縮にはやはり薬品を使うから、エコじゃない。なるべくそのまんまのものを使うっていうのが向こうの人たちだから、向こうの人たちはやはり未防縮を好むと思う。

さっきのターさんの話で、19.5マイクロンを防縮にして18.5マイクロンクラスにするっていうの、初めて聞いたんですけど、例えば16.5マイクロンの防縮の場合、それってもしかしたら最初スタートは17.5マイクロンの可能性があるってことですか?

うーん、そこはなんとも言えないですね。

ただ、マイクロン細いやつにやれば、当然もっと細くなるのは分かっているんだけど、すごい値段が高くなるよね。それとこれは個人的な意見だけど、そんな良い、高いものを買う人たちはウォッシャブルかどうかを気にするのかなっていうのが疑問だね(笑)ただスポーツをやる人、ゴルフをやる人たちは やはり防縮ウールを選びたがるかもね。その辺はブランドにもよるかもしれない。スポーツブランドだったらそういうこともあり得るけど、普通の一般的なファッションブランドだったら未防縮ウールをそのまま使うんじゃないかと思う。

なるほど。なんかちょっと気になったんですよ。最近そういう防縮ウールのハイスペックなものが増えたっていう印象があったんで。

ここは余談になってくるんだけども、16.5マイクロンを防縮加工したものってかなり高価なものになるはず。それを使ったセーターなんてなおさら高級品になるはず。そのセーターを買った人が自分で洗うのか?ってことはまず考えないといけない。クリーニング出しちゃうんじゃないかなぁ。

このご時世に16.5マイクロンクラスで60番とか引いて防縮加工して染めたら、、、かなりの高額になることは間違いないですよね。

紡毛に防縮ってかなり少ないなと思っているんですけどどうでうすか?

紡毛に防縮加工ってできないんじゃないかい?繊維が短すぎて滑って加工できるのかなって思う。何しろ繊維長が短い。やはりある程度絡まないと糸ってできないから、摩擦がないとできないんだよね。 それが防縮加工してあまりに摩擦がなくしすぎると、糸がすぬけちゃうから、糸ができないと思う。だから物として少ないんじゃないかなと思うんだよね。

カシミヤって基本洗えるじゃないですか。つまりカシミヤは基本防縮、ってことになるんですか?

カシミヤにはウロコがほぼないからね。表面がツルッとしているから、鱗をとる必要がない。防縮、というかもともと防縮っていうか(笑)なんていうんだろうね。防縮加工はしないよ基本的に。

そういう種類なんですねカシミヤは。 だから光沢もあって色が綺麗なのか〜。モヘアの防縮ってあるんですか?

いや、モヘアは洗えるんですよ

え!モヘアって洗えるんですか!

洗えるんです。

モヘアは鱗がないということ?

無しは言い過ぎだけど、ウールに比べるとかなり細かい。

じゃあ手洗いとかネットに入れて洗濯機に放り込んでいいと?

そうなんです!

ふと思ったけど、モヘア100%の糸って実はあまり見たことがないですね。

アルパカ100%もそうなんだけどモヘア100%ってトルクが強すぎて、編み目の途中で歪みが入って、編み目が途中でひっくり返っちゃうんだよね。アルパカ100%の天竺だってほぼ目にしないはず。これも同じ理由ですね。

そうですね。目がガタガタしてしまいそうですね。

それをあえて昔やってたのは無印良品さん。もうこういうもんです、っていう前で商品化してた気がする。
昔はメンズの夏のスーツにはモヘアを使ってたんだよ。嵩高性があって光沢があってかっこよかったなぁ。

じゃあアルパカは鱗あるんですか?

アルパカも少ないよ。

じゃあアルパカも洗えるんですか?

洗えるよ!
獣毛系って結構洗えるんだよ実は。
ウールが一番鱗が大きいから絡みが大きい。

どっちかというと、獣毛系って洗えないってイメージ、僕だけじゃないと思うんですよね。 結構みんなそう思ってるんじゃないかなぁ。

羊以外は結構洗えるもんですよ。だけど縮むか縮まないかという問題以外に洗いによるリスクっていうのは他にもあって、それを考えたときに洗えないってブランドとして表記しちゃう。だから洗えないって思う方が多分多いんだと思います。

じゃあ洗濯機でオシャレ着洗濯機能あるじゃないですか、それを使えば洗えちゃうんですね?

ネットに入れて、表裏を逆にすればOKです!

干し方も大事ですね。

干し方が難しいかもね。
平干しが大事です。

家で平干しできなくないですか?そんなスペースないんですもん。

バスタオルを窓際に置いてその上で干すみたいな感じ(笑)
でも平干しは確かに難しいと思います。

こんな話すごく面白いと思うんですよ、洗濯の話。 だってみんな洗えないと思ってますもん。

そもそも、ドライクリーニングって汚れ落ちないからね。繊維の中に水分が入っていかないから、汚れが出ていかない。 表面はきれいになるけどね。

確かに、洗濯をキーワードにするのが面白そうですね。
話がずれてきたのでこの辺で(笑)
ターさん、ありがとうございました!

防縮と未防縮の回でしたが、最後は洗濯の話で盛り上がってしまいました。(笑)

でも洋服を買う上で、洗えるかどうかってとても大事なポイントですよね。

以上、第二回「防縮と未防縮について」でした!

記事の内容やニットに関することは、お気軽にお問い合わせください

アバター画像
丸安毛糸 編集部

お問い合わせ

記事を書いた人

アパレル会社・企業向けにセーター用の糸と製品の販売を行っている丸安毛糸株式会社です。
素材セレクトから、製品化に至るまで、トータルでサポート致します。
皆さんと一緒に、皆さんの想いをカタチに致します!

BLOG TOP