ニットの編み端が巻いてしまうときの対処法

  • 編み・柄

2

皆さん、おはようございます。井野です。

今回は、ニットのロールについて書いていこうと思います。ニットの端が巻いてしまうというのは、主に天竺の編み地で起こる現象です。カーディガンの前端を編み地の耳を使いたいけれど巻いてしまって安定しない、スリットを入れた時に編み端が巻いてしまう、ということはないでしょうか。なぜ編み端が巻いてしまうのか?巻かないようにするにはどうすればいいかを解説します。

なぜ編み端は巻いてしまうのか?

ここでは、編地の端の巻きについてどういったものか、説明してみようと思います。
(巻き・ロール・カールなど人それぞれに色々な呼び方があると思いますが、ここでは巻いてくることの意味として同義に使用しています。)

① 巻く方向
ニットや、カットソー生地を扱ったことのある方なら経験したことがあると思います。
天竺の編地というのは、素材にもよりますが一般的に端々がクルクルとロール状に巻いてしまいます。

↑のイラストの様に、編出し/編み終わり、地の目で言う正目方向は生地表側に、編み端、(カットソーでは生地の耳側)が生地裏側に巻いてしまいます。これは、天竺編地での一般的な巻き方向となりニットの特徴のひとつでもあります。

② どうして巻いてくるの?
天竺の編み方、編目の作られ方というのは、すでに前に編まれていたループ(旧ループ)に後ろ側から新しいループをひっかけて作られていきます。

この連続するループの形自体、湾曲してまっすぐなものではないので、かかる力の方向が決まっています。

編地自体がこの連続したループの向きによって形作られているので、編地に働く力は、タテは前側に、ヨコは後側に巻き込むようにかかっています。

よって、編地の端は、抑えられる生地もないので自然と巻いてしまい、カットした場合に至っては、どこで裁断しても同じように端がクルクルとロールしてしまうのもそのためです。
弊社製品での扱いでは、セーターなどでは端は縫製してしまって端がでないので良いのですが、マフラーなど平らな商品は巻いてしまうので抑えるのにも工夫をしたり、試し編みで調整をしています。

編み地の丸まりを解消する方法

それでは、編み端が巻いてくるのを抑える方法をいくつかご紹介します。基本的には、天竺のままではどうしても巻いてきてしまうので、編み端を別の組織にします。

① 総針の組織を入れる

総針組織は、表と裏で同じように表目が出るようにするため、編み地が片側に巻くのを解消します。

組織としては、下記のようなものが多く使われます。

・総針
・片袋(ハーフミラノ)
・袋編み

端:片袋(ハーフミラノ)裏側から

素材やデザインに合わせてバランスの良い組織を使います。

② リンクス柄で、表目/裏目の力を相殺して抑える方法。

リンクスは表と裏を組み合わせた柄で、表と裏を同じように配置することで端の力を相殺させます。

・リブ(1X1リブ、2X2リブ等)
・ガーター(1X1ガーター、2X2ガーター等)

端:1×1リブ
端:2×1リブ

一般的に上のような組織で端をカバーすることで押えることができます。素材やストレッチ入りなど、さらに巻く力が強い場合は、組織の巾を広くするなどしておさまるところまで調整したり、セットプレスなど仕上げでできるだけおさまるように整えることもあります。また、度目が強い程、巻く力も強いので、甘い度目で風合い感を変えてしまうことも例外ですがあります。

端を片袋(ハーフミラノ)/編出しを袋編みで作成したストール

別のパーツを付ける

上記のように編み地の組織を変えてもどうしても丸まってしまったり、組織の境目で折れてしまう場合に取れる方法は

・見返しに共糸のテープや、布帛のテープなど別パーツをつけて丸まりを抑える
・編み地を折り返して見返しにする
・全面的に組織を総針やリブなど別の組織に変える

などになりますが、厚みや見た目にも影響がでてくるので、コートなどの厚みのあるものだったら良いかもしれませんね。

あえてロールさせてしまおう

巻きを抑える方法を紹介してきましたが、あえてロールを使ってみることもお勧めします。裾、袖口や衿など、ロールにすることで、切りっぱなしのようにとても自然な雰囲気で軽い仕上りがニットならではのポイントになります。

端々をロールさせて、ロール止めに針抜き袋編みをしたプルオーバー

まとめ

天竺のニットの端は丸まってしまうものですが、デザインとして活かしたり、編み地を工夫して解消することができます。イメージに合わせて工夫してみて下さい。それでは、また。