糸も呼吸をしている? 糸の水分率と貿易取引について

  • ニット製品の輸出入

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こんにちは 片野です。
今回は糸に含まれる水分についてのお話です。


私たちが取り扱っている”糸”は様々な繊維でできていますが、その糸の重さの中には、必ず水分が含まれています。


糸を海外から輸入したことがある方は、経験があるかもしれませんが、インボイス(請求書)にある数量と実物の糸の数量が少し違う?!という経験をされたことがあるかと思います。これは糸に含まれる水分が原因であることが多いです。


ここで疑問に思うのが、水分が環境によって変わる糸を取引するときにどのように重さを決めればいいのか?ということです。
もし自分が買い手になった場合、糸の製造地が湿度が高く、その水分を多く含んだ糸を日本に輸入をした場合、日本の湿度が製造地より低かった場合は、水分が抜けてしまい糸の重量が減ってしまうので損をしてしまいます。
そこで公平な取引をする手段として、繊維には「公定水分率」というものが定められています。


公定水分率とは

温度20℃湿度60%の環境における繊維内の水分率のことです。
糸や繊維を取引する際には重さ(KG)が基準となりますが、繊維ごとの公定水分率を定め、この水分率のルールに従って重さの管理をすることが義務付けられています。

各素材の公定水分率


主な繊維の公定水分率はこちらです。

綿         8.5%

ウール(獣毛繊維) 16%

麻         12%

和紙        10%

シルク       11%

レーヨン      11%

ナイロン      4.5%

ポリエステル    0.4%

天然繊維である綿やウールは、原料が自然のものなので、水分を多く含みます。

反対に化学繊維のポリエステルは水分率が低くなります。

レーヨンの形状

意外にも化学繊維のレーヨンは水分率が11%と高くなっています。

レーヨンは特殊な形状をしていることから表面積も多く、そのため水分の吸収率が高くなります。

この公定水分率は貿易取引をするうえで欠かせないルールですが、海外から糸を買われない方も繊維の水分率を覚えておくと便利です。


例えば、水分率の高い繊維は環境によって重量の変化が激しいので気温状況によって変動があります。

空気が乾燥している冬に重さを測ると目減りをしていて、数量が少なくなることがよく起こります。繊維の水分率を知っていると原因が解明しやすいです。

実貫と投入との関係

海外との取引、または昔の丸安毛糸では実貫での取引がよく行われていました。

投入=生地糸ベースで、染め上がった重量で販売する方法

実貫=染色後の糸そのものの重さを測り販売する方法

詳しくは下記のブログもご参照ください。

要は染め上がった後は目減りが必ず発生しますが、それは上記でご紹介した公定水分率の範囲であれば仕方のないケースとして扱われます。

※実貫での取引だと、水分率の多いタイミングで出荷すると糸屋さんが有利になってしまうなどの影響があり、今は投入ベースの取引が日本では主流です。

最後に


入社した当初は、輸出入の業務で、書類上に様々な数量が出てくるので、公定水分率のことを理解するのが難しく、色々と苦戦した思い出があります。。

糸も呼吸をしているというシンプルな考え方をすると分かりやすいかなと思いました!

今回は少し専門的な記事になりましたが、皆さまのお役に立てたら幸いです。


それではまた。