ニット糸の番手(毛番手・綿番手)と適正ゲージの計算方法

  • 繊維と糸

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こんにちは、大久保です。社内スタッフからも質問の多い”糸の番手とゲージの関係について”ご紹介します。
この関係は、糸の素材や形状(作り方)などによってさまざまです。
多くの素材を知って、多くの編み方をしていくことで経験値として蓄積されていくものでもありますので、目安としての知識として受け取ってほしいと思います。

目次

  • 糸の番手とは
  • 綿番手と毛番手の違い
  • 糸の番手と適正ゲージの関係
  • 引き揃える時の番手計算方法
  • まとめ

 

糸の番手とは

まず、糸の番手についてです。

糸の番手は、重さと長さから割り出します。

1g:1m=1番手

1/10の場合は、1kg(1000g):10000m=10番手
となり、1kgで、糸の長さ10000mあるということになります。
1/30の場合は、kg(1000g):30000m=30番手
となり、1kgで、糸の長さ30000mあるということになります。

ということは、糸の番手の数が大きくなるほど、糸の長さがある=糸が細くなるということです。

綿番手と毛番手の違い

綿番と毛番の違いについて触れたいと思います。
同じ糸でも綿番表記したり、毛番表記したりするのでややこしいですが、この差を知っておくのは番手の基本でもあります。

通常は、
分母が大きくて、分子が小さいのが毛番(例.2/48(よんぱちそうし))
分母が小さくて、分子が大きいのが綿番(例.40/2(よんまるそうし))
という風に見分けることができます。

なぜ、このような違いがでるのかといいますと、紡績の方法が違うからです。
毛番で表示するもので代表的なのは梳毛紡績で作られた糸です。
梳毛は、梳毛紡績でひいたウールを言いますが、梳毛紡績は繊維長が長くないとひけません。 (約76mm)

それに対して綿紡績は、繊維長が長いものでも4センチほどしかありません。(38mm)
なので、梳毛の紡績の機械ではひくことができないので、綿紡績でひくことになります。
綿紡績で作られた糸は、綿番手で表示します。

しかし!
綿紡績でひいたものも、毛番で表示することがあります。

たとえば、丸安毛糸の初夏定番素材「khufu クフ」を例にとると、「khufu クフ」は毛番の2/68と表記したり、綿番の40/2と記載したりさまざま。(綿番40/2=40×1.7=68なので、毛番手は2/68と表示)
なぜ毛番にするかというと、綿番よりも毛番のほうが、適正ゲージなどに当てはめやすいのと、 毛番のものと比べやすいという理由で、わざと毛番に直して表示しているわけです。

同じ綿素材で他に、「Aganes アガネス」も3/85と表記していますが、綿紡績で作られた糸ですので、本当は綿番手の50/3です。
50/3と表記はあまり馴染みがないので、分かり易く3/85と表記しています。ではなぜ総合番手の1/28と表記しないのかというと「Aganes アガネス」の糸の特徴は目面がキレイなことです。この目面のキレイさは、3/85の三子撚り(みっこより)という撚糸方法から生まれるものです。
本数を多くよると糸み丸みが出て目面がキレイになります。このように糸の特徴を分かり易く、お知らせする意味の番手表記もあります。

他にも、「Spoerry Ice Cottonスポエリーアイスコットン」は35/1S.35/1Zと表記しています。
この糸は単糸で販売しているので30/1の後にSZか記載してあります。この糸は単糸での取扱いができるという素材の特長から毛番手に換算せずに綿番手表記を残しています。(毛番手にするなら、35×1.7=60なので、毛番60/1)

ほかに、麻番手というのがありますが、麻は「潤紡」というこれまた特殊な紡績方法でひいたものが麻番手になります。
「 Herdmans 40 ハードマン」は麻番40/2=40×0.6=24なので、毛番2/24と表示)

このように、糸の特徴を分かり易く表記するためにも、番手の表記がさまざま存在することになります。
下記の番手換算の計算をし、すべて毛番手に直すことで、適正ゲージの目安を引き出すことができます。

番手の換算方法

綿番手→毛番手・・・×1.7 (例:綿番手40/2×1.7=68 毛番手2/68)
麻番手→毛番手・・・×0.6 (例:麻番手40/2×0.6=24 毛番手2/24)

 糸の番手と適正ゲージの関係

番手の換算が分かったところで、次は適正ゲージ(G)についてです。一般的には、 目安として『毛番=ゲージ』といわれます。
たとえば、
1/12=12G
1/7=7G
1/5=5G
1/3=3G
となるわけです。

しかし、これはあくまでも目安で、12Gまでは『毛番=ゲージ』となる場合が多いですが、14G以降はそうとも行きません。
2/60、2/48、2/30、1/43、1/27・・・・などなどになってくると、素材や形状によって全く変わってきます。

そして、天竺やリブなどの編地の種類によっても変わってきます。また編む機会の種類にもよります。
そして最終的には正直なところは、好みになります。

一般的な梳毛を例にとりますと、
2/60(1/30)を一本取りでかける場合、
天竺だと18G16Gがだいたい適正です。
二本取り(1/30×2→1/15)だと、14Gか12Gが適正です。

2/48(1/24)一本取りだと
天竺で16G14Gがだいたい適正です。
二本取り(1/24×2→1/12)だと12Gが適正です。

これがファンシーヤーンになってくるとだいぶ変わってきます。
1/13のモヘアのタムタムヤーンを例にとると、 番手のイメージだと12Gに入ってしまいそうですが、 実際に12Gで編んでしまうとガチガチになってしまい、 せっかくの毛がふかなくなってしまいます。
なので、7Gで編んでいます。 タムタムヤーンの場合は、かなりゲージを落として編むことをおすすめします。

 

引き揃える時の番手計算方法

最近のトレンド傾向にもみられる引き揃えの編地。

同じ素材の場合の計算は?『Puff パフ 1/14』の場合
1/14+1/14+1/14=3/14=1/4.6 となるので、3本どりで5Gが良いとなるのですが、番手の異なる異素材の場合はどうしますか?。

異素材を引き揃えて編む場合の番手の計算方法をご紹介します。
異素材を組み合わせて編む場合は、 番手を一度デニールに直します。

たとえば、
『Puff パフ 1/14』と『JazzCross ジャズクロス 1/3.1』を引き揃えで編む場合、

1/14=9000÷14=643デニール
1/3.1=9000÷3.1=2903デニール
643+2903=3546デニール
9000÷3546=2.53

なので、総合番手は毛番で約1/2.5となり、適正ゲージは3ゲージとなります。

まとめ

番手は奥が深いものであります。さまざまな糸を組み合わせることは、デザインのアイディアの幅を広げることでもあります。
実際に編んでみないとわからないものですが、計算によってある程度の目安をしることができます。 ぜひ、さまざまな糸を組み合わせたときの参考にしていただければと思います。