ニット製品の作り方・種類 ホールガーメントについて⑩ ニットパタンナーの小話
- ニット製品や糸を生産する工場
- 投稿日:
- 2016-04-13
- (更新日:2020-06-27)
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ども!皆さんこんにちは。飯島です。
前回のブログにも書いた通り、引き続きリハビリ中です(笑)
関節の隙間が狭くなっているので、腰を引っ張られながら足を伸ばし伸ばし運動。直後や次の日には腰が痛いですが、少し経つとだんだん楽になってきます。
やっぱり日頃の運動不足。暖かくなってきたので、そろそろ体動かせる休日を過ごさないと行けないなぁと思うこの頃。釣りや山へと今年もシーズンが始まってきました!
さて、今回はブログシリーズも10回目。
何を書こうかと、常々ネタも探していますが、前回のパターンの事についてもお返事を頂き好評でしたので、パターンについて書いてみます。
ニットのパターンはとてもニッチな分野ですが、私は非常に大事だと思っています。
元々ニットパタンナーなので、余計に重要性を伝えたいのです。
デザイナーさんも仕様書で1/5パターンをひいたり、生産では回数書きをするにも寸法出したりと、、布帛ほどパターンについて大事にされませんが、ニットだからこそニットパタンナーや企画生産には必要なんじゃないかな?と思います。
なかなか、ネットを探してもニットパターンについては触れることもないので、少しずつですがご紹介できればと思います。
それでは、今回は10回目、自分も原点に返りご紹介いたします。
■目次
・パターンについて
・ニットの生産方法によるポイント
カット
成型
ホールガーメント
・まとめ
■パターンについて
さて皆さん、パターンについて服飾関係にいる人ならご存知かと思いますが。。
型紙のことですね。一般に仕事はなに?などパタンナーですって言ってもピンと来ない方もいますが、僕は服の形を作る人と説明しています。サイズ展開とかもね。(グレーディング、グレーダーさんの仕事の部分や、布帛などでは裁断をする際に一番効率が良くなるように配置するマーキング、マーカーさんなどの分野も兼任することが多いです。また生産管理など工場とのやり取りをする場合もあります。)
デザイナーさんが両方やる場合もありますが、服を作るうえで、デザインの意図をくみ取り、シルエット調節、生産ラインとやり取りしてどうやって形にするか、縫製方法など仕様面を詰めて、生産ができるよう調整します。
服を作るうえでの設計図となるのがパターンとパタンナーさんの指示になります。
布帛のパターンは服飾系の学校で基礎として習いますので、服飾関係へ進んだ方なら大概は理解されていると思います。
ではここからニットブログらしく、ニットに焦点をあててご紹介します。
ニットでパターンはまだまだ認知が低いのが現状ですが、正確な形を出すこと、新しい形を考えるためにもパターンは重要になります。
そこで、今回は僕が実務をとおして思った、ニット製品の作り方それぞれのパターン、特にアームホールや袖山についてポイントをまとめてご紹介します。
■ニットの生産方法によるポイント
カット
<カットソー・ニットソー>
生地を裁断してミシン(リンキング)で縫製する場合。
これは非常に布帛パターンに近いパターンになります。
四角く編んだニットを生地として裁断しますので、それぞれのパターンでは布帛と同様に、自由に形や、外形線を引くことができます。
縫い合わせる箇所の寸法を合わせ布帛と同じ感覚で、縫製もパターン通りになるのできれいで正確なラインが求められます。
ニットで生地も伸びるので、カットソーのパターンが一番感覚的に一番近いです。
ただ、編み出しのリブを使いたい場合などは裾・袖口などは水平になるので、縫い合わせの始めなどは水平を取るなど注意が必要です。
基本はミシン縫製ですので伸ばしやイセなどもカットソーと同様に入れることが可能です。
(伸ばしのほうが工程的には頻度が多いですが、縫製では縫い伸びや、伸び止めなどの調整が必要になります。)
※裁断をし、目が落ちますから端の処理はロックミシンをかけて行います。
◎代表的な編地としては、ゴム地、ミラノリブ、接結編みなど成型が難しい編地。
ジャカードなど成型が難しいが、柄の生地として扱える編地など。
成型
成型は非常にニットらしいパターンになります。
縫製方法もバリエーションがあるので、作り方によってパターンも合わせます。
<外成型>
縫製方法はミシン仕上げ、リンキングと2種類からなります。
リンキングについてはこちらから⇒ニット特有縫製方法!リンキングについてご説明します!
パターン通りに形を成型編みで表現することができるので、先のカットと同じような型紙を再現することができます。
縫製も同様にミシンで作る場合と、リンキングでは“ぶっ刺し”といわれる目と目を刺すのですがミシンのように縫製箇所の長さで合わせながら、縫い目をリンキングのループで閉じます。
◎代表的な編地・・・成型可能な自動機を使用したゴム地・ジャカード地。天竺、組織編みなど全般で行われます。
<内成型>
縫製方法は主にリンキング。
パターンは非常にニットらしい直線的なものになります。
外成型よりも外形の処理に制限があります。
縫製箇所は、目と目を1目ずつ合わせるので、アームホールや肩線など、同じ目数にする必要があります。
例えば・・・肩線などは、パターンの長さではなく、水平距離の巾を合わせる。
AHであれば、AHと袖山と編むコース数で高さを合わせる。
減らし目や増やし目は、目立てが綺麗にファッションマーク(重なり目・セーターの衿や袖に入っている点々のことこと)が入るように角度や比率に注意する。
◎代表的な編地・・・天竺、組織柄など、ニットらしい増減目の入れられる編地。
後肩減らしを行うデザインの物は大概この作り方です。⇒ニット製品の作り方・種類 ホールガーメントについて⑨ 後肩のパターン
ホールガーメント
<ホールガーメント製品全般>
ホールガーメントでは、基本的に外形は前身と後ろ身頃が同じ形になります。
理由はこちらから⇒ニット製品の作り方・種類 ホールガーメントについて⑥ 袖の寄せ減らし
上記を守って、成型のパターンと同じ方法でパターンを引くことができます。
ただ、前後同型ともありますのである程度作成できる形・パターンに制約がでてきます。
編み方も、成型の<内成型>を基に機械内で編立、疑似的にリンキングをするかのような編立てを行います。
前後同型を守り、その制限の中でどのような形を表現できるのか、縫製のない衣類を考えるところが、ホールガーメントの面白さだと思います。
■まとめ
ニットのパターンに求められることは、その企画・デザインをどのように作るのか、機械は?縫製方法は?という企画段階からスタートします。
それぞれの生産方法に合わせて効率やコスト、無理がないか?仕上がりの予想を立てて、無駄のない、適したパターンを引いていくことではないかと思います。
設計図を描き、実際に編立てや縫製ともやり取りを重ね、企画と生産現場の間に入って仕様の調整を行います。
布帛のパターンさんと同じように、素材から、どんな機械、ゲージ、度目風合い、縫製方法や機材なども頭に入れておかねばなりません。
企画デザイナーさんがパターン指示までを行うことが多いかと思いますが。工場では専属のパタンナーさんが対応いただき、指示からパターンの調整を行っています。
自分も、実際働くまでは全く知らなかったことですが、すこーしだけでもポイントを抑えることで、設計のしやすさやニットの面白さを楽しめるようになるかと思います。
またまたニッチな内容でしたが(笑)少しでも興味を持っていただけたら幸いです。
ご質問もお待ちしていまーす!ではまた!
過去のシリーズを読みたい方はこちらをどうぞ↓↓↓
ニット製品の作り方・種類 ホールガーメントについて① ホールガーメントとは?
ニット製品の作り方・種類 ホールガーメントについて② そもそも横編みとは?
ニット製品の作り方・種類 ホールガーメントについて③ 手袋からセーターへ
ニット製品の作り方・種類 ホールガーメントについて④ どうやって一着を編んでいるのか
ニット製品の作り方・種類 ホールガーメントについて⑤ ニットのシステム/企画サポートいたします
ニット製品の作り方・種類 ホールガーメントについて⑥ 袖の寄せ減らし
ニット製品の作り方・種類 ホールガーメントについて⑦ WGの基本的な形をご紹介します