ニット製品の作り方・種類 ホールガーメントについて⑧ ボーダーの編み方・成型との違いとは?
- お知らせ
- 投稿日:
- 2016-03-09
- (更新日:2020-06-27)
ども。皆さんこんにちは。飯島です。
展示会の季節ですねぇ、繊維業界の方も慌ただしい時間を過ごされているかと思います。
お疲れ様でございます (;´・ω・) _旦~~
弊社ニットブランド“Punto D’oro.”も同じように展示会を迎え、国内のみならず、海外ではパリのParis sur mode(3/4~3/7)に出展。このブログを書いている時は展示会の真っただ中、会場では多くのお客様との新たな出会いがあります。
会場の雰囲気も良く、自慢の商品をよりいっそう引き立てて良い感じじゃないですか♪
光を浴びて、今季テーマにしたニットらしいニット、ふかふかの獣毛の空気をはらんだ気持ち良さがぐっと伝わります。
もちろん今回もホールガーメント商品も取り扱っていますよ~。
”Punto D’oro.”のHPはこちらから⇒http://www.puntodoro.jp/
今回のブログでは展示会へ向けて企画した商品(展示会の写真にあるボーダーの商品ですね。)から、気づきや学んだことをつらつらとご紹介します。
・・・先に言っておきます。ちょっとマニアックですがお付き合いください(笑)
■目次
・ボーダーを作るうえで考えること
・成型のボーダーの場合
・ホールガーメントの場合
・両者の違いは?
・糸の切り替えの活かしかた
・まとめ
■ボーダーを作るうえで考えること
超超ド定番のボーダー。今季は某ブランドのCMでもメインで打ち出していますよね。
また、ボーダーがそのブランドのアイデンティティとして成り立っているところもあります。
巾の間隔や配色で「あ、あのブランドだ!」と一目でわかるもの・・・
制服や記号としての扱いや、日頃の定番コーディネートとしても使い回し易い。それだけ昔から馴染みがありファッションには欠かせない要素ですよね。
とくにニット・カットソーでは編みの特性から非常に扱いが多いデザインの一つ。
自由度やデザイン性も高く、それだけに奥が深いボーダー。
図案的なところが一番重要な要素ですが、その編み方について考えたことはありますか??
私も見え方の部分にばかり注意を払っていましたが、今回ホールガーメントのボーダーを企画してよりいっそう理解したこと、後になって気づかされた事がありました。
そこで、今回は成型編みと、ホールガーメント両者のボーダー製品の作り方の違いをご紹介したいと思います。
■成型のボーダーの場合
まずはごくごく一般的な成型編みのボーダーのセーターの作り方から。
横編みですから、裾、袖口からグランド色(以下G色)と配色(以下A色)を繰り返しボーダー状に編み続けていきます。
身頃・袖とそれぞれパーツごとに平面一枚を編み上げるので、端の糸始末は大きなボーダーピッチでない限り、G色、A色とも一筆描きの要領で編み端に糸が繋がったまま編立て、そのあと縫製を行います。
縫い代があることで端の糸は表からは隠れてしまいますから、イラストのように編み端に渡る糸の始末をせずそのままなことが多いです。
ボーダー商品の縫い代をよく見ると、生地端の部分に糸が渡っているのがわかると思います。
■ホールガーメントの場合
では、ホールガーメントは??・・・・・・。
そうです!ホールガーメントは筒の状態(゚Д゚)
どうなってるの?って思いませんか!?
そうなんです、、気づかれたかもですが、、。編み端は筒の“わ”の状態なんです。
え?じゃあどうしているのよ?という疑問。。
ホールガーメントの場合、縫い代が無いという大きな特徴があります。
が、編機・編み方の構造上、編み端の外側に糸が渡りますので、製品にそのまましてしまうと端の糸全部が表に見えてしまうのです。
袖・身頃・袖をボーダーで編むと、上のイラストのように糸が表に浮き出てしまいます。
ではそこで、どのように処理をしているのかというと、、、。
① 全て人の手で糸始末を行う。
これは単純明快!端糸をカット。表に見えないように裏側に引き込み、糸がほつれて飛び出てこないように裏面のループに隠し込みます。
あまりに切り替えの数が多いと、これはあまり現実的ではないですよね。
②機械上で糸始末を行う
それでは、、人の手ではなく編機の中でやってしまおう!
ということから、それぞれのボーダーが切り替わるところ⇒糸入れ、糸出しのところで、編地に出入りする糸を裏側にタック編みでひっかけて編みながら糸の始末を行います。
これによって、手で行っていた糸始末の工程を機械上で行うことができるのです。
編み下がったら余分な糸を粗断ち。縮絨が終わったら、仕上げでもう一度浮き出ている余分な糸をカットします。
こちら↓が編み下がりの状態です。
<袖・身頃・袖>の部分編地
先日の新潟出張にて、協力して頂いているニッターさんより是非とも皆さんへ見て頂きたいと預かってまいりました。
ボーダーの箇所に糸が渡っているのがおわかりでしょうか?
(今回の編地は素材や編みの都合上、外側に余分な糸を止めておく捨て編みを付けて編んでいます。)
編み端ではなく、糸始末を行っているため途中から糸が飛び出しているのがわかります。
編機での糸始末の仕上がりはこちら↓
<裏からみた脇の部分>
表からはなんら見えませんが裏側では糸がチョンチョンと掛かっているのがわかりますね!
機械上で行っているので、人の手による始末からしてみれば大幅に時間は短縮されます。
■両者の違いは?
さて、ここでちょっとまとめると。。
・成型の場合はボーダーの配色切り替えを縫製で隠すことができるので、糸の始末がいらない。
・ホールガーメントは縫製工程が無いが、糸の切り替えが表に渡るため糸の始末を行う。
ここが大きな違いです。
※ただ、この違いによる事の注意があります。
「最初は無地で作った製品があり、、追加バリエーションでボーダーを増やそう!・・・。」
このような事、ありますよね。
成型の場合はボーダー配色を追加しても、さほど無地と生産工程は変わらない為、コストはキープのままで生産できることがあるかと思います。
ですがこの際のホールガーメントの場合は、糸の始末が追加されるため編成時間や糸のロス、工程が増えることになりますので、若干のコストUPを見込んでおくことも必要になってきます。
それぞれの良さがありますので、ホールガーメントの場合は企画段階で考慮しておく必要がありますね。
■糸の切り替えの活かしかた
他には糸の始末をそのままにすることで魅力的なデザインに転換することもできます。
編地を裏使いにする
糸が表に出てしまうなら、裏使いでデザインを考えることもあります。
裏のほうが表情の良い素材や、組織を仕様する事でカバーすることができます。
そのまま糸の渡りをデザインとして利用する
これは、外に渡る糸をデザインポイントにしてしまうことです。細かなピッチで糸を渡らせれば、脇に縦のラインのようにすることもできます。シンプルだけどちょっとしたヒネリが欲しいときなどいかがでしょうか。
■まとめ
さて、長くなりましたが、おわかりいただけましたでしょうか?
今回自分も企画を進めていて、あらためて認識した内容でした。
社内でもなるほどー!となった内容です(笑)
成型との違い。ボーダーひとつとっても奥が深いです。
ホールガーメントは成型とは一味違った魅力のある編機である分、特徴やポイントをついて理解できればすごく面白くなりますよ~(‘’ω’’)ノ
これからも引き続きご紹介していきますね。
それではでは~。
過去のシリーズを読みたい方はこちらをどうぞ↓↓↓
ニット製品の作り方・種類 ホールガーメントについて① ホールガーメントとは?
ニット製品の作り方・種類 ホールガーメントについて② そもそも横編みとは?
ニット製品の作り方・種類 ホールガーメントについて③ 手袋からセーターへ
ニット製品の作り方・種類 ホールガーメントについて④ どうやって一着を編んでいるのか
ニット製品の作り方・種類 ホールガーメントについて⑤ ニットのシステム/企画サポートいたします
ニット製品の作り方・種類 ホールガーメントについて⑥ 袖の寄せ減らし
ニット製品の作り方・種類 ホールガーメントについて⑦ WGの基本的な形をご紹介します
今回一部の写真はこちら↓より画像転載させて頂きました。
http://free-photos.gatag.net/tag/%E3%82%B7%E3%83%9E%E3%82%A6%E3%83%9E
http://www.andyhouse.co.jp/different/news/archives/2013/08/yuri_park_capo_6.html